120 :名も無きAAのようです:2011/09/03() 00:14:29 ID:ogVCEywo0

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             Caution!



           ―(^ω^ )

            ―ヽ ノ―┓

              <

              ┛





  ※ここから、先ほどまでの話とは全く関係ないお題短編です



   登場するAAに一切の関連性はございません

   独立した一個の短編だと思ってください。





121 :名も無きAAのようです:2011/09/03() 00:18:58 ID:ogVCEywo0



ある秋の日、友だちが死んだ。



突然の事だった。





   ( ^ω^)は友の生きた証を知るようです





( ^ω^)「相変わらず、綺麗に整理された部屋だおね」



友だちといっても、親しかったのは高校時代の事で、大学、就職と進むにつれ、ずいぶん疎遠になってしまっていた。

友だち、ドクオの部屋を訪れるのも久しぶりの事だった。



( ^ω^)「お邪魔しますお」



永遠に主が戻る事のない部屋に一声かけ、中に入る。



白を基調とした色合いの、さして物の多くない部屋。

部屋の隅にあるベッドの横には、几帳面に巻数順に並べられた漫画が並ぶ書架がある。



高校時代見慣れていた部屋は、今も変わらぬ姿でそこにあった。





122 :( ^ω^)は友の生きた証を知るようです:2011/09/03() 00:21:17 ID:ogVCEywo0



( ^ω^)「……変わらぬ部屋に、一つだけ大きく変わったものがある、か」



漫画を読んだりゲームをしたり、この部屋で共に過ごしたドクオの姿は今はない。

たったそれだけで、僕にとってはこの部屋が全く異質の物に見えてしまう。



( ^ω^)「過ぎた時間は戻らないんだお」



ドクオの葬儀は至って簡素な物で、訪れる人間もお世辞にも多いとはいえなかった。

ドクオの家は母子家庭で親戚付き合いもなく、また当人の少し気難しい性格から、

交友関係も極めて狭かった事を考えれば妥当な所だろう。



だから、五年近くも会っていなかった僕がドクオの親しい友人という位置付けで、

ドクオの部屋を見てやって欲しいと頼まれたのだ。



きっと、ドクオの事を誰かに覚えていて欲しかったのだろうと思う。



( ^ω^)「あ、ドクオもこの漫画集めてたんだ」



欲しいものがあれば何でも持っていってくれと言われてはいるが、それは何だか気が引けた。

これ以上、この部屋の様相を変えるのは気が咎めたのだ。



彼の生きた証を、残しておきたかった。





123 :( ^ω^)は友の生きた証を知るようです:2011/09/03() 00:23:05 ID:ogVCEywo0



( ^ω^)「たまにメールとかすれば良かったおね」



ドクオとは色々と趣味があった。

こうやって同じ漫画を集めている所とか、きっと嗜好が似ていたのだろう。

多分、メールや電話で話せば、きっと楽しい話が出来たはずだ。



( ^ω^)「忙しかった、は言い訳にならんおね」



人間関係、学業、就活、仕事と、めまぐるしく訪れる数多くの新たな事象。

高校オまでと違い、物理的な距離も離れ、生活時間帯も変わってしまった僕とドクオの間が、

疎遠になるのも自然な事だったかもしれない。



けれども僕は今、その事を後悔している。

またこの町に戻れば、昔のように自然に話せるものだとどこか楽観視していた。



( ^ω^)「今となっては、何を言っても仕方のない話だお」



僕はいつの間にか下がっていた視線を窓際に向けた。

そこにはドクオが小学生以来使い続けている学習机が置いてある。

物持ちのいいドクオの物だけあって、デザイン的な古さはあるものの、今も綺麗なままだ。





124 :( ^ω^)は友の生きた証を知るようです:2011/09/03() 00:24:44 ID:ogVCEywo0



( ^ω^)「あ……」



何とはなしに学習机を眺めていた僕は、机の奥の方、壁際にあるそれに気付いた。



( ^ω^)「パソコン……」



ドクオはコンピュータ好きで、高校時代はパソコンを随分と欲しがっていた事を思い出した。

母子家庭であるドクオの家では、パソコンは気軽に買える物ではなかったから、

いつかバイトして買うと、原則、アルバイト禁止だった高校時代よく嘆いていたものだ。



( ^ω^)「そっか、買えたんだおね」



その事が僕には何だか自分の事に様に嬉しく思えた。

同時に、今でもこんな気持ちが浮かぶのに、ドクオから遠ざかってしまっていた事が悲しくなった。



( ^ω^)「お、ネット回線も繋がってるお。きっとパソコンライフ、満喫してたんだおね」



僕は笑みを浮かべ、パソコンに近付く。

今の時代、パソコンもネットも珍しい物ではないが、ドクオの置かれていた環境を考えると、

如何にドクオがそれを手に入れるのにがんばったか、楽しんでいたかが目に浮かぶようだ。





125 :( ^ω^)は友の生きた証を知るようです:2011/09/03() 00:26:15 ID:ogVCEywo0



( ^ω^)「……パソコン」



ふと僕は、一つの危惧を抱いた。



ドクオは僕と嗜好が似ている。



ドクオは急死した。



パソコン。



( ^ω^)「有り得るお……」



急死したといっても、中身を整理する時間はあっただろう。

几帳面なドクオの事だ、ちゃんと整理していつでも消せるようにしていた可能性は高い。



しかし万が一……



( ^ω^)「この中に、あんなファイルやそんなファイルが残っていたとしたら……?」



ドクオのお母さんは、きっとこの部屋をこのままにしておくだろう。

それに多分、パソコンにも疎いタイプだと思う。

だから、このパソコンも誰にも触られず、このままにして置かれるかもしれない。





126 :( ^ω^)は友の生きた証を知るようです:2011/09/03() 00:27:20 ID:ogVCEywo0



けれどもし、残されたドクオのお母さんが亡くなられたり、

そうでなくても引越しなどで荷物を処分する必要が出て来たりしたら……。



( ^ω^)「高確率でこれは処分される恐れがあるお」



ただ処分されるだけならまだいい。

問題は、これの中身を見られる場合だ。

ひょっとしたら、この中には故人の尊厳を著しく傷付ける物が入っているかも知れない。



そうなったらドクオは……



( ^ω^)「……」



僕は無言でパソコンの電源を入れた。

見慣れたOSの起動画面が表示される。



そこに、下賎な興味がなかったとは言わない。

けれどきっと、僕が一番ドクオの事をわかって上げられると確信に近い思いもあった。



( ^ω^)「こういう時、やって欲しい事は人類共通だおね」



幸いな事に、パスワードはかかっていなかった。





127 :( ^ω^)は友の生きた証を知るようです:2011/09/03() 00:29:14 ID:ogVCEywo0



本当はハードディスクの中身を見ずに消すのが一番良い。

パソコン自体を物理的に破壊してしまう等の手段を取って。

けれどそれは、残されたドクオの思い出も消す事でもあり、その事を知ればドクオのお母さんも悲しむだろう。



それにこの中には写真や日記など、ドクオの思い出が綴られた何かがあるかもしれない。

それをドクオのお母さんに見せてあげれば、空いてしまったドクオとの関係の穴埋めに少しはなるだろうか。



( ^ω^)「やっぱハードディスクの中身も綺麗に整理されてるお」



残ね──幸運な事に、アウアウなファイルはハードディスクの中には存在しなかった。

死期を悟ったドクオが処分したのか、元から興味なかったのかは定かではないが。



でも、後者ではない気がする。

僕とドクオは似ているから。



( ^ω^)「お、日記っぽいファイル発見」



ざっと閲覧してみたが、日々の何でもない様な事が書かれた、文字通り日記と呼べるファイルのようだ。

これが痛々しいポエムの類であったら、見なかった事にして消すつもりだった。



これをドクオのお母さんに見せてあげれば、少しは喜んでくれるかもしれない。





128 :( ^ω^)は友の生きた証を知るようです:2011/09/03() 00:30:44 ID:ogVCEywo0



( ^ω^)「他には……お? これは……」



日記とは別のフォルダに、いくつかのテキストファイルが保存されていた。

そのファイル名は……



( ^ω^)「youdesu01.txt ……ようです? ひょっとして……」



ようです。



何の変哲もない、特に意味があるとは思えない言葉ではあるが、奇しくも僕はそれに心当たりがあった。



( ^ω^)「ひょっとして、ブーン系小説かお?」



ブーン系小説。

広大なネットの片隅で、細々と運営されている、いわゆるネット小説だ。



運営されているといっても、これといった運営機関があるわけではなく、

個々人が自由に参加して活動する、小さいながらもそれなりに歴史のあるコミュニティだ。



何でそんなマイナーなコミュニティを僕が知っているかといえば、答えは簡単だ。

僕もそのブーン系小説に関わっているからだ。





129 :( ^ω^)は友の生きた証を知るようです:2011/09/03() 00:32:08 ID:ogVCEywo0



( ^ω^)「もしかして、ドクオも……」



ドクオも、ブーン系小説を書いていたのだろうか。



かくいう僕も、いくつかの作品を書いた事がある。

けれども、何作か書いた後、僕には書くよりも読むほうが性にあっていると理解し、以降は読者専門だ。

そういう楽しみ方もブーン系小説ではメジャーなものだ。



( ^ω^)「1、2、3……結構な数のファイルがあるお」



ここにあるようですという名のファイルは、その原稿なのかもしれない。

まず原稿をテキストファイルなり、携帯電話なりに書き溜めておいて、

スレッド形式の掲示板に1レスずつ貼っていく、投下するのが一般的なブーン系小説の形式だ。



( ^ω^)「この数、現行でも持っていたのかお?」



現行、いわゆる連載作品の事だ。

一のスレッドに短い話を書いて投下する短編と違い、長期間に渡り続き物を書いて行く現行を持つ事は、

多分に困難を極める。



そんな中、これだけのファイルを有しているドクオは、中々の実力ある作者だったのではないだろうか。





130 :( ^ω^)は友の生きた証を知るようです:2011/09/03() 00:34:03 ID:ogVCEywo0



( ^ω^)「……あれ、そういえば」



ブーン系には数多の作品が存在し、それぞれに違った面白さがあり、僕を長年に渡り楽しませてくれていた。



そんな中、僕が今一番注目している作品に、

『( ・□・)ブーンはあるフランスベッドで競歩するようです』、通称『ある歩』という名前の現行がある。



しかし残念ながら最近、この作品は投下されていない。

ただそれは、投下がなく自然消滅、いわゆる逃亡したからというわけではない。



『ある歩』の最新話投下後に、作者から一つのアナウンスがあったのだ。

病気の療養でしばらく投下出来ない、と。



( ^ω^)「ドクオ……」



僕はある確信に近い思いを抱き、一つのファイルにマウスを合わせる。

フォルダの中にある、一番新しいファイルに。



( ^ω^)「ドクオ……君の思いは僕がきっと──」



僕は意を決し、ファイルを開いた。



( ^ω^) カチッ





131 :( ^ω^)は友の生きた証を知るようです:2011/09/03() 00:36:07 ID:ogVCEywo0



 残念! キューちゃんのおっぱいでした〜!





   │││     O      O ヽ

   │││\|/   丶――    |

  O│││|\           丿 O

   /t                   。

  /゜                     \

 ./゜                      .ヽ、 

 |            。           \

 」            ](            ..l

  )、   .qx     」k    /"lk      .l(

  )(   ),,4R]!    f )、  |ll(|   __

   h。  ゚Y「゜   / .ヽ、  ^^^  ,,.-^

    ..,,,,______,,/゜   ...v-'^^^











         おちんちんびろーん





            ヽ('A`)

             (  )

            ゛





132 :( ^ω^)は友の生きた証を知るようです:2011/09/03() 00:37:02 ID:ogVCEywo0



























( ^ω^) カチッ





僕はそっとファイルを閉じた。





133 :( ^ω^)は友の生きた証を知るようです:2011/09/03() 00:38:29 ID:ogVCEywo0



その後、他のファイルを開き、一瞥しては閉じるという作業を繰り返した後、ある結論に達した。



( ^ω^)「うん、見なかった事にしよう」



僕はフォルダ内にあった全てのようですファイルを削除した。



決して誤解してもらっては困るのだが、このような意味不明な作品、いわゆるクソスレが悪いわけではない。

これはこれで需要がある物なのだ。



しかし……



( ^ω^)「親が見たら確実に泣くお」



それも、悪い意味で。

だから僕は、全てのファイルを消去し、ドクオの部屋を後にした。



その手には、何も持つ事はなく。





134 :( ^ω^)は友の生きた証を知るようです:2011/09/03() 00:40:03 ID:ogVCEywo0



ドクオの思いを受け取った僕は、その日の夜、生まれて初めてクソスレを立てて投下した。

ドクオへの手向けとして。



奇しくも『ある歩』はその日、作者が快癒して最新話が投下されていた。



( ^ω^)「『ある歩』、やっぱおもすれー」



僕はこれからも、ドクオの分までブーン系小説を楽しんでいこうと思う。



僕がブーン系小説を読み続ける限り、ドクオの事はきっと忘れないだろうから。



忘れたくても忘れられない、鮮烈な思い出を僕に残してくれたクソスレの記憶と共に。



( ^ω^)「あ、クソスレなのに意外と伸びたお」







   ( ^ω^)は友の生きた証を知るようです  おしまい





135 :名も無きAAのようです:2011/09/03() 00:44:06 ID:ogVCEywo0



お題

 ブーン系小説

 友だち



 あとがき お題が、こう、漠然というか広義すぎると却って話が思い付かないものですね。

       全てはオチというか、ファイルを開くとこの為のお話でした。

       苦情とかそういうの何かあったらお気軽にどうぞ。全力で聞き流します。





  以下、>>118 からの続き……の前に再び短編お題募集



短編お題



安価

>>136

>>137

>>138