( ^ω^)「ヒーローはレッド」を譲れないようです(2)

 

1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 16:07:38.64 ID:85FUJr7l0

祭り中にさるって投下終わらなかった

 

 

2 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 16:13:01.42 ID:uZv5eSLh0

 

代理スレ立てありがとうございます。

 

さて、>>1に書き込んでいただいた通り祭り後です。

遅刻してしまったことに、お詫びを。

 

まとめは

 ブーン文丸新聞さん

 ttp://boonbunmaru.web.fc2.com/

 

よろしければ、お付き合いください。

 

 

3 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 16:14:56.88 ID:uZv5eSLh0

 

ここまでのあらすじ

 

 魔力、武術、科学、金銭の力により、大陸全土が戦による血で濡れた。

 ついにヴィップ国国王ロマネスク十四世により和平が結ばれ、つかの間の平和が訪れる。

 だが、強大な金の力を持つニューソク皇国皇帝ワカッテマスはそれをよしとしない。

 

 魔と学を金により練り合わせた武の兵器、魔導騎士が完成してしまう。

 仮想生命を宿した無慈悲な虐殺兵器。

 それが利用されれば、戦後の傷を負った国々は容易く蹂躙され、ふたたび世に血が流れる。

 

 ロマネスク十四世は五名の使者を潜入させ、皇帝暗殺と兵器の奪取を命じる。

 兵団団長ホライゾン・ナイトウ。

 弓兵『鷹の目』ツン・デレ。

 傭兵『迅雷』ドクオ。

 高名なる魔術師クール・スナオ。

 騎士『絶対防壁』モナー。

 

 彼らは外相としてニューソク城へと潜入、ホライゾン、ドクオ両名が魔導騎士に迫る。

 ホライゾンが兵器廠にて目撃したのは、百を超える魔導騎士。

 

 魔導騎士とは、暗殺対象、皇帝ワカッテマスの分身であった。

 それを実現するために命が奪われていると知り、激昂するホライゾン。

 

 彼は、多数の皇帝の一人の胸に刃を立てた。

 

 

4 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 16:16:37.55 ID:uZv5eSLh0

 

 脱力した対象から剣を引き抜き、左右へのステップ。

 ブーン、いや、剣士ホライゾンの俊足が堅い石床を踏みつける。

 

 ジグザクの動きに鎧が腰を落として構えた。

 右方へと飛び掛った影が、剣を振り下ろす。

 

 しかし、それはフェイク。

 

 軌道を真横にずらし、油断していた甲冑の脇の下から核を突く。

 

 がり、と擦過音。

 

 魔導騎士がまた一体倒れた。

 噴き上がる非生物の血液。

 

 風の如き俊足。

 炎の如き太刀筋。

 

 戦場を震え上がらせた剣士ホライゾン・ナイトウの動きは止まらない。

 

(;'A`)「ちっ、やるしかねえのか!」

 

 

5 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 16:19:40.79 ID:uZv5eSLh0

 

 数は多いが動きのにぶい魔導騎士は、翻る赤が接近する度、次々と倒れていった。

 ドクオもそれに続こうと、手にした短剣を構える。

 そこで、背後から冷めた声が聞こえた。

 

( ・∀・)「やめておけ。体力の無駄だ」

 

(#'A`)「てめえは何言ってやがる! やれるうちにやっとかねえと国が死ぬんだよ!」

 

( ・∀・)「彼も止めた方が良い」

 

(#'A`)「寝ぼけたことを」

 

 激昂したドクオの口が、その形のまま固まる。

 

 揺らぐ「それ」の不安定な姿勢が、ひどく恐怖を煽った。

 

 

 始めに絶命したはずの魔導騎士が、起き上がっていた。

 

 

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 16:25:11.03 ID:zv8+ZiTg0

 

まとめ読んでくる

 

しえーん

 

 

7 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 16:26:22.60 ID:uZv5eSLh0

 

 その様子を喩えるなら、天からの糸に従う操り人形。

 

( <><>)――再起動」

 

 ひとりでに胸部装甲が閉じられると、それは直立した。

 

( <●><>)――修復中」

 

 漏れ出ていた複雑な色が、空中に凝集する。

 

 それらが一粒の雫になった。

 

( <●><>)――核再構築」

 

 だらりと唇と開けたワカッテマスが、不定形の結晶を口に含む。

 

 そして、喉を鳴らして飲み込んだ。

 

 

 

( <●><●>)「完了。あ、ドクオ殿。おはようございます」

 

 しわのある顔がにっこりと微笑んだ。

 

 

8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 16:29:11.94 ID:hn7B3cjoO

 

支援支援

 

 

9 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 16:30:42.46 ID:uZv5eSLh0

 

(A)「ばかな」

 

 急に人間らしい立ち居振る舞いに戻ったワカッテマス。

 それは首を回し、目を瞬かせてからあくびをした。

 

( <●><●>)「どれくらいわたくしは寝ていたのでしょう……

       あれ? ホライゾン殿は最後まで話を聞いてくださらなかったんですか?」

 

(A)「そんな、そ、そんなばかな」

 

( ・∀・)「皇帝。戯れが過ぎる」

 

 モララーは嫌気が差しているのを隠しもしない。

 

( <●><●>)「ふむ。わかってます、が。しかし良い材料ですねえ。もっと利用できそうです」

 

(A)「何でだ。核が弱点じゃないのか」

 

( <●><●>)「ホライゾン殿の色味を持つ感情。彼の怒りですか。実に美味」

 

( ・∀・)「……組み込んであるんだ。修復の術が」

 

(A)「殺しても、殺せないってのか? そんな、どうやったって……

 

 

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 16:31:32.55 ID:hn7B3cjoO

 

しえん

 

 

11 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 16:32:22.69 ID:uZv5eSLh0

 

( <●><●>)「絶望もまた、美味ですよ。ドクオ殿」

 

 二番目に倒されたはずのワカッテマスが言った。

 柔和な笑みをたたえたまま、肩を叩く。

 ドクオは魔導騎士の言う感情をありありと顔に浮かべていた。

 

( ・∀・)「大気に感情が溢れる時。つまり、人間と戦っている時だ。

      魔力核は、自然回復の速度を速める。材料が、そこにあるんだからな……」

 

( <●><●>)「彼を一旦止めないといけませんね。わたくし達! 全力を出してかまいませんよ!」

 

 途端、鈍かった魔導騎士の動作がブーンのそれと遜色ないほどに速まる。

 

「おおおおおおお! どけええええええええ!」

 

 咆哮。

 鋼が装甲を叩く金属音。

 殺到する鎧。

 

 ついに、白と黒に埋もれ、赤いスカーフが見えなくなった。

 

(;'A`)「ブーン!」

 

 飛び出した叫びとは裏腹に、ドクオは脚を動かせはしなかった。

 肩を握る魔導騎士の力強い手が、彼の身体を文字通り掌握していたのだ。

 

( <●><●>)「お連れもすでに捕らえてあります。あまり、抵抗なさらないよう」

 

 

12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 16:34:18.75 ID:zv8+ZiTg0

 

しえんしえん

 

 

13 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 16:34:56.74 ID:uZv5eSLh0

 

 耳打ちされて、ドクオは身体の力を抜いた。

 むしろ、自然と抜けたのに近い。

 

( <●><●>)「ヴィップの大使は良い。実に有益です」

 

('A`)「くっ」

 

 やがて、組み伏せられたブーンの姿が明らかになる。

 

(#゚ω゚)「フー……フー……僕が止めてやるお。絶対に貴様らを……。

      クソ! 離せ! 離せえええええええ!!」

 

( <●><●>)「おやおや」

 

 始めのワカッテマスはそちらに歩み寄る。

 徐々にその速度を上げ、小走りになったところで大きな左足の一歩。

 

 ドクオは悟ってしまう。

 

('A`)「おい、お前、何やってるんだ。やめろよ」

 

 だが、認めたくない。

 

 具足に包まれた右足が後方から送れて振り出される。

 

(;A)「やめろ!」

 

 悲痛な叫び空しく、それは実行される。

 

 勢いのついた鉄が激昂した剣士の顔面に――。

 

 

14 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 16:37:23.97 ID:uZv5eSLh0

 

 

 

 

 

 がつ。

 

 

 

 ブーンの視界がぐしゃりと歪んだ。

 

 

 

 

 

 

 

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 16:38:28.98 ID:hn7B3cjoO

 

支援だ

 

 

16 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 16:40:58.32 ID:uZv5eSLh0

 

(   ω ゚)「お・・・、おおお、お……

 

 ワカッテマスは蹴り上げた脚を見て、不満げに鼻息を吐き出した。

 

( <●><●>)「どうも重量に欠けます。軽いと威力が出ませんね。

        受けてみて、その辺りのバランスはどうですか?」

 

 ホライゾン殿、としゃがみこむ。

 目線の定まらぬ頭を両手で持ち上げ、覗き込む。

 ブーンは、ひたすら繰り返していた。

 

( ゚ ω )「とめ、とめる。ととと、とめ、ぼくが。とめっっ」

 

 息が詰まる。

 

 床にまかれる、吐瀉物。

 

 気にする風でもなく、ワカッテマスはブーンの様子を観察していた。

 その横で、他の魔導騎士がゆったりと核を再構築しているのが、ドクオの視界の端に映った。

 

( <●><●>)「ううん、脳震盪くらいは十分に起こせるみたいですね。

        頭砕くほどやりたいもんですが。さて、そろそろお話、聞いてもらえますか?」

 

(  )「ドクオとやら。従っておけ」

 

 ドクオは舌打ちをして、しかし、何も言わない。

 

 

17 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 16:42:29.20 ID:uZv5eSLh0

 

( <●><●>)「んっふう。ようやく落ち着きましたね。騒々しさは必要ない」

 

( ゚ ω )ハッハッハッハッ

 

 浅く早い呼吸をするブーン。

 彼の眼球はぎょろぎょろと動き続けている。

 誰から見ても危険な状態であると分かった。

 

( <●><●>)「さっきの宣戦布告ですけど。あれは冗談です」

 

('A`)「なんだと?」

 

( <●><●>)「見逃してあげても良い、と言っているのですよ」

 

 ドクオが眉根を寄せた。

 

('A`)……何が条件だ」

 

( <●><●>)「さすが、分かっていらっしゃる。物事は相互の意見が一致して初めて進む」

 

('A`)「うるせえ。意見の一致じゃなく、強制だろうが」

 

 

18 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 16:45:33.07 ID:uZv5eSLh0

 

( <●><●>)「脱出してごらんなさい。この城から」

 

(;゚ ω )ハッハッハッハッ

 

(;゚ ω )「だっしゅ、つ?」

 

 そう脱出、と言葉は続く。

 

( <●><●>)「今からお連れと同室へ運んで差し上げましょう。五人揃ってお逃げなさい。

        部屋から出たら、わたくしはそこの砂時計をひっくり返します」

 

 玉虫色の砂を内包した砂時計が、ワカッテマスの指差す先にあった。

 大人の腰ほどまでの高さを持ち、胴回りも同程度。

 ドクオは喋れないブーンに代わり、問う。

 彼の鼻に、ブーンの吐いた胃液のにおいが届いた。

 

('A`)「それはなんのカウントだ」

 

( <●><●>)「魔導騎士団導入までの猶予ですよ。つまり、わたくし達。

        それまでは一般の兵士や、骸傀儡を追っ手に出します」

 

 

19 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 16:49:43.12 ID:uZv5eSLh0

 

 骸傀儡とは、白骨死体を操る古来の魔術が生み出す低級兵だ。

 打撃にもろく簡単な指令しかこなせない。

 しかし、その材料は戦によって、まさしく腐るほど残されている。

 

( <●><●>)「城門を抜け、川の向こう岸まで辿り着けたらあなた方の勝ち。

        今回の件は不問にしましょう。どうです? 胸が躍りませんか?

        脱出劇に、わたくし達が主役として出演です。二国間の競演です」

 

('A`)「胸が躍るだぁ? はっ! はらわたなら煮えくりかえってるぜ。

    ……早く仲間のところに連れて行け」

 

(; ω゚)ハッハッハッハッ

 

(  )「幸運を、祈る」

 

 ずっと黙っていたモララーがぽつり、呟いた。

 ドクオはブーンを肩にかつぎ、立ち上がって答えた。

 

('A`)「ありがとうよ」

 

 彼らが兵器廠を後にすると、モララーは、部屋にこもり嗚咽を漏らした。

 しかし、それは誰にも知られることはなかった。

 

 

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 16:51:44.51 ID:zv8+ZiTg0

 

しえすた

 

 

21 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 16:53:25.47 ID:uZv5eSLh0

 

ξ;「ブーン! ドクオ!」

 

 一行が男部屋として利用した一室に、ツン、クー、モナーは捕縛されていた。

 ブーンがドクオに連れられて入った途端、ひとりでに全員の縄が切れる。

 ツンとクーが詰め寄った。

 

ξ;「ブーン、しっかりして!」

 

; -)「どうしたんだ! 何が起きた!」

 

 す、と彼女達の肩に大きな手のひらが乗せられる。

 

( ´∀`)「二人とも、ちょっと待つモナ。ホライゾン君を診ないと」

 

('A`)「頭を強く打たれてる。一度ゲロった。落ち着かせるものが必要だ。

    時間ならある。俺達が部屋を出るまでは手を出さないと言っていた」

 

 ドクオの声の冷静さに、クーとツンは身を引いた。

 

-)……治療を始めよう」

 

ξ;「ブーン」

 

 クーが魔術で、モナーが薬草でブーンの介抱を始める。

 

 

22 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 16:55:18.04 ID:uZv5eSLh0

 

(  ω )「お、お。みんな、ごめ、ごめんだお」

 

ξ゚听「喋らないで。話なら後で聞くわ」

 

(  ω )「だめ、だったお」

 

-)「モナー」

 

( ´∀`)「ホライゾン君、少し水を飲んで黙るモナ」

 

( ;ω;)「お、おおおお」

 

('A`)「馬鹿野郎。黙っとけよ。うるさくてかなわねえ」

 

ξ゚听……ドクオ」

 

('A`)「英雄のレッド・ナイトだったか。そいつぁ情け無いことぐだぐだ言うヤツだったのか」

 

( ´∀`)「モナモナ。ホライゾン君。人情派イエローの言うとおり。

       レッドに泣き言は無用だモナ」

 

 ブーンは落涙しながら口をつぐむ。

 割れそうに痛む頭の中で巡る想いが重なる。

 彼の決意が、なされた。

 

 その間も、蒼の光が体内を癒し、深緑の葉が痛みを和らげていった。

 

 

23 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 16:59:14.41 ID:uZv5eSLh0

 

('A`)「いいか。道は俺が先導する」

 

 ドクオは簡単な地図を描きながら言う。

 

('A`)「あのクソがどれだけの準備をしているかは分からない。

    だが、やたらめったら完璧な布陣では来ないだろう」

 

-)「言い切れるのか」

 

 クーに、ブーンが答える。

 彼の血色は大分良くなっていた。

 

( ^ω^)「お。皇帝は自分が出撃したがってるみたいだったお」

 

ξ゚听……猶予は?」

 

('A`)「多く見積もって三十分ってとこだ。走れば、十分抜け道まで到達できる」

 

-)「邪魔が入らなければな」

 

 ブーンが頷く。

 

( ^ω^)「正直に言うお。魔導騎士は、強いお」

 

ξ゚听「ブーンと同等の実力で数がこちらの二十倍以上。やりあってられないわね」

 

( ^ω^)「だからこそ、一度も立ち止まらないで行くお」

 

 

24 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 17:01:49.76 ID:uZv5eSLh0

 

 各々が装備を確認し、集中を高めていた時、ブーンは何かを感じてよろめいた。

 ぐらあり、と揺れる世界。

 

(  ω )「んんん。お、お、お?」

 

 脳内を走るイメージ。

 誰かの悲鳴が木霊する。

 

 額縁。

 

 何の単語だろう。

 

 黄色が広がる。

 

 すえた匂い。

 

 湧き出したものは?

 

 黄色、黄色だ……。

 

ξ゚听「ブーン、どうしたの。まだ頭痛むの?」

 

 

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 17:01:59.70 ID:zv8+ZiTg0

 

しぃえん

 

 

26 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 17:07:19.69 ID:uZv5eSLh0

 

 ツンの声にブーンは、はっとする。

 視界の不思議な歪みはそこで一旦消えた。

 

( ^ω^)「い、いや、大丈夫だお。ただの立ちくらみだお」

 

ξ--)ξ「そう。だったらしゃんとしてて。縁起でもないわ」

 

( ^ω^)「おっお。いつものツンらしくって安心するお」

 

('A`)「おいリーダー。いくら敵さんが時間くれるっても、ちゅっちゅし始めたら俺が許さねえぞ」

 

 白と黒との調度品が余所余所しい城内では、色の変化が如実に現れた。

 ツンの白い肌がじわりと紅潮し、ピンクに染まる。

 腕を振り回しながらドクオに迫る彼女は、耳まで桃色だった。

 

ξ///)ξ「うっ、うるさい! 誰がこいつとそんなことするってのよ!」

 

゚ー゚)「ほう? フラれたなレッド」

 

( ´∀`)「いやいや、反目してるように見せるのが、愛情表現を深めるコツだモナよ」

 

ξ///)ξ「ばばばばば馬鹿! うるさいうるさい!」

 

 

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 17:07:30.97 ID:zv8+ZiTg0

 

さるかな?

 

 

28 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 17:10:00.61 ID:uZv5eSLh0

 

 三人に弄くられ、怒鳴る対象を絞れない彼女を、ブーンは愛しげに眺める。

 衣服に、皮の鎧に、弓に矢立に隠されたその背中。

 犠牲の証明がそこにどれだけあるのか、すぐに思い出すことができる。

 

 誓った。

 守ると誓った。

 

 口付けした傷だらけの肌。

 

 ともに生きた同郷の仲間。

 

 家族。

 

 親友。

 

 いや、愛する女性だ。

 

 絶対に守る。

 

( ^ω^)(ツンを、絶対に守るんだお)

 

 

29 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 17:12:05.37 ID:uZv5eSLh0

 

 五人は部屋の戸を開けると、わき目も振らず走り出す。

 城内の様相は、それまでと一変。

 モノクロが極端なものとなっていた。

 明るいところがただ白く、暗いところがひたすらに黒く。

 本来あるべき中間色は完全に間引かれてしまっていた。

 

 ドクオがまず前衛として、チェス板のような廊下を先導していく。

 角をふたつ曲がったところで初めての敵に遭遇する。

 

「いたぞ! 賊だ、容赦するな!」

 

 槍を構えた生身の兵士が五人。

 だが、数は同じでも積み重ねた鍛錬には雲泥の差がある。

 大柄の鎧が、右に短槍を、左に巨大な盾を構え、突進した。

 

( ´∀`)「押し通すモナ。皆、絶対防壁の後を悠々ついて来たら良いモナ」

 

 モナーに迫る槍は、しかし、重層の装甲に触れることすら叶わない。

 短槍はそれらの切っ先を全て跳ね上げる。

 長く太い腕が容易にそれを実現した。

 

 そして、空いた胴を殴りつける左。

 

 連続で五度の衝突音。

 分厚い金属板が強烈な横振りにより、兵士達を吹き飛ばした。

 そして、壁や床に叩きつけられる音も五つ。

 彼らが体勢を立て直すまでに間を走る抜ける人影も、五つ。

 

 

30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 17:14:31.17 ID:+aneMrlEO

 

支援なのである

 

 

31 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 17:14:45.81 ID:uZv5eSLh0

 

('A`)「亀吉。お前さ、二つ名変えないか。『自立歩行功城兵器モナー』とか。

    『鈍足戦車・緑亀丸』とかどうだ。リョクキマルだぞ、かっこよくね?」

 

-)「ふむ、『移動要塞モナー』はどうだ」

 

(;´∀`)「モナッ、ロマネスク国王のネーミングセンスにケチつけるなモナ!」

 

 高揚した心持ちのまま軽口が叩かれる。

 ブーンはドクオが意識的の行っているのに気付いた。

 圧倒的な戦力を目の当たりにして、なおも平素を装うドクオ。

 恐怖していないわけがない。

 慄かないはずがない。

 それでもムードメイカーの役割を買って出る彼に、ブーンは感謝していた。

 

( ^ω^)「ドクオ、次は?」

 

('A`)「左に曲がってしばらくは直進。見通しの良い道が続く」

 

ξ゚听「安心して。鷹の目が敵を見逃さないわ」

 

 正面に見えるはT字路。

 左右からの待ち伏せが予想される。

 あるいは、出会い頭の急接近。

 

 

32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 17:15:22.72 ID:hn7B3cjoO

 

支援する

 

 

33 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 17:17:28.52 ID:uZv5eSLh0

 

 ツンが走りながらも弓を取り、目を凝らす。

 彼女は、黒の背景に紛れた影を見逃さなかった。

 左右に集団。

 矢を引き抜き、腰のポーチから小包取り出すツン。

 矢じりにきっちりとはまる形で包みが装着されると、一瞬、彼女は走りを緩める。

 澄んだ双眸がすう、と細まる。

 

ξ゚听「着弾直後、閃光を発するわ。直接見ないようにして」

 

 言うが早いか、弦は引かれ、弓はしなり、矢は放たれた。

 

 鋭い直線が空を切り裂く。

 始点は金の射手の手元。

 終点はT字路の交差点。

 

 眩い白が拡散した。

 

「クッソォ! 目が見えん!」

 

「こしゃくな!」

 

 左折した五人の目に、無闇に剣を振る兵士たちが映った。

 道を塞ぐ何人かだけを殴り倒し、ブーンは叫ぶ。

 

(#゚ω゚)「邪魔をするなおおおおおお!!」

 

 

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 17:17:51.12 ID:zv8+ZiTg0

 

しえんしよう

 

 

35 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 17:20:30.43 ID:uZv5eSLh0

 

 

 

 駆ける、駆ける、駆ける、駆ける。

 

 モノクロームに奏でられる無調の音楽。

 怒号は、悲鳴は、雑踏は、途切れない。

 

 駆ける、駆ける、駆ける、駆ける。

 

 

 

 

 

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 17:22:30.98 ID:zv8+ZiTg0

 

>>35

亀ですが把握しますた

 

 

 

37 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 17:23:40.74 ID:uZv5eSLh0

 

 

 もろい骸骨の群れを焼き払う。

 

 躍り出た兵士の脚を刺す。

 

 待ち伏せに斬り付けられる。

 

 横合いからの矢が頬を掠める。

 

 息が上がった。

 

 血が滲んだ。

 

 吼えた。

 

 心臓が叫ぶ。

 

 限界だと叫ぶ。

 

 それでも駆ける。

 

 生きるために。

 

 守るために。

 

 脚を止めてしまえば、それは叶わない。

 

 

 

38 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 17:25:32.92 ID:uZv5eSLh0

 

(#゚ω゚)「ドクオォォォォォ! 次はどっちだおおおおおお!」

 

 走り寄る、前方からの敵に斬りかかるブーン。

 兵士の首に入った刃は、鋭さを失い始めた。

 だが、辛うじて頚椎を叩き折ったようだった。

 鈍い音を起こし、白目を剥いた人間。

 新たな敵が屍を乗り越え、あるいは踏み締め、押し寄せる。

 

(#'A`)「クソがどきやがれ! その扉だ、そこに入れ!」

 

 目的地はすぐそこなのに、という歯がゆい思いに、ドクオは苛立つ。

 彼の足には死に損ないの兵士の腕が絡んでいた。

 それを突き、目前の槍を寸でのところで交わす。

 

; -)「そこだな。中で待つ! 早く来いよ、ドクオ!」

 

 ブーンが切り開いた道へとクーは走った。

 殺到する人間が、骸骨が、優に五十を超えている。

 短縮詠唱による魔術で左右を押しのけると、彼女はブーンと合流し、扉を開けた。

 

ξ;「急いでモナーさん!」

 

(#´∀`)「これで、とどめだ、モナッ!」

 

 同時に三人の兵士を盾の重量で押しつぶす。

 呻きは一瞬、沈黙は永遠だった。

 姿勢の崩れたモナーを狙う敵が一名。

 その眼窩を、ツンの矢が穿った。

 

 ついに、五人がその部屋へと到達する。

 

 

39 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 17:27:39.46 ID:uZv5eSLh0

 

; - )――我らが安息を護り給え。一時の加護よ、ここにあらんことを」

 

 全員の入室を確認すると同時に、クーは封印魔法を扉にかける。

 

; -)「『拒絶の護り』……これで少しは息がつけるはずだ」

 

 蒼い光が木製の板を不動の鉄壁へと変えた。

 

(; ω )「皆、無事かお」

 

 各々が息絶え絶えに、力無くそれに答えた。

 見れば、奇跡的に大きな怪我は誰の身体にもない。

 腕に滲んだ血を、裂いた布で抑えるブーン。

 その手に玉虫色の石を認め、ドクオが声をかけた。

 

(;'A`)「まだ、それ付けてたのか」

 

 それは、モララーが二人に託した魔力核。

 

(; ω )「お? すっかり忘れてた、お」

 

(;´∀`)「……ふぅ。それはなん、げっほ、なんだモナ?」

 

 

40 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 17:28:05.82 ID:zv8+ZiTg0

 

 

 

41 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 17:29:34.64 ID:uZv5eSLh0

 

 汗を拭い、息を整えてから、ドクオが答える。

 

('A`)「魔導騎士の動力源を小型にしたものらしい。開発者の一人から受け取った」

 

-)「モララー、か」

 

ξ゚听「不思議な色をしてるのね。でも、綺麗なのに、これが人を殺すなんて……

 

 輝きは乱雑なようで、規則的にも見える。

 殺意無き塊。

 死を練成する賢者の石。

 生み出したのは、愚者の欲望。

 

-)「それさえあれば、魔導騎士への対抗策が講じられるかもしれない。

     我が家系の学者なら、おそらく解析が可能だろう。材料はなんだ?」

 

 問われたブーンは、刹那、ぎくりと身を強張らせた。

 しばし逡巡したような表情。

 そして、呟くように言う。

 

(  ω )「魔の力。色味のある感情。そして、血だお」

 

ξ;「血?」

 

 

42 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 17:31:57.80 ID:uZv5eSLh0

 

('A`)「武人の血液だ。戦をくぐりぬけた戦士の心臓を抜き出して採る血」

 

( ´∀`)「……狂ってるモナ」

 

 最悪の殺戮機械は贄の上に成立する。

 ヴィップで思い描かれていたのは、無血戦争の担い手としての魔導兵。

 現実はそうではない。

 既にその青写真は赤に染められている。

 

-)「おい、ドクオ。貴様なんと言った」

 

('A`)「あん?」

 

-)「戦士の心臓だと?」

 

('A`)「ああ。生体から採取すんのは難しいんだとよ……。死体から――

 

# -)「くそ! やられた!」

 

 突如声を張り上げるクーに、ドクオは唖然とした。

 怒りを露にする姿など、通常の彼女からは考えられなかったのだ。

 

(  ω )「クーさん。やめるんだお。その先は」

 

# -)「それに色味ある感情の粒子! 完全にはめられた!」

 

ξ;「ど、どうしたのよ急に!」

 

 クーは、言い放った。

 

 

43 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 17:34:03.47 ID:uZv5eSLh0

 

 

 

 

 

 私達は魔導騎士の材料作りに手を貸していたんだ

 

 

 

 

 

 

44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 17:35:53.79 ID:zv8+ZiTg0

 

SHIEN

 

 

45 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 17:36:11.77 ID:uZv5eSLh0

 

 ざわ、とドクオの肌が粟立つ。

 

(A)「お、おい。これは、皇帝の戯れじゃないのか」

 

- )「考えても見ろ。ここに来るまで何人殺した」

 

 記憶にあるのは、死骸の山。

 

- )「密閉空間で溢れる感情。そして、時間差で現れる魔導騎士ワカッテマス」

 

 ドクオの脳裏に、空中に凝集した魔力核が浮かんだ。

 

- )「私達が蒔いた種は城内で混ざる。育った花の下へ魔導騎士」

 

(;´∀`)「ヤツはそれを刈り取る、ということモナか」

 

ξ゚听「ウ、ソ、でしょ」

 

- )「全てを得んが為に智謀を巡らす皇帝、ワカッテマス。それがヤツだ」

 

ξ ;)ξ「ウソ」

 

(  ω )「ツン……」

 

ξ;;)ξ「生き延びようとする度に、命を奪う度に、それがまた兵器を生むの? ウソでしょう?」

 

 ツンはぺたりと床に座り込んでしまった。

 

 

46 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 17:40:21.63 ID:mqU++uARO

 

しえん

 

 

47 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 17:40:46.53 ID:uZv5eSLh0

 

 

 彼女は崩壊しかけていた。

 

 誰かの命を奪う。

 そうすることで第三者には危害が及ばない。

 だから、自分は仕方なくでも手を汚す。

 血に濡れることをいとわない。

 

 戦場で自らを守るため、自らの心を守るため。

 平和のためと言い聞かせて騙していた。

 苦し紛れの正当化。

 

 でも、ここでは、それすらも通用しない。

 

 繰り返すのは、明らかになった事実への否定。

 

 胸中に形容しがたい塊ができる。

 

 それは吐き出したくても吐き出せない塊。

 

 ひた隠してきた膨大な罪悪感。

 

 

 

48 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 17:42:36.80 ID:uZv5eSLh0

 

( ^ω^)「ツン」

 

ξ;;)ξ「あああああああ、ああああああああ……

 

 ブーンの腕が、彼女の身体を包んだ。

 

( ^ω^)「ツン!」

 

ξ;;)ξ……ブーン」

 

( ^ω^)「それでも、今まで僕達のしてきたことは間違っていないお。

       信じるんだお。自分を。ここまで走ってきたのは絶望するためじゃないお」

 

-)「ブーン、お前、まさか」

 

 彼は頷いた。

 

('A`)「気付いていたのか」

 

( ^ω^)「ごめんお」

 

( ´∀`)「……モナ。謝ることじゃないモナ」

 

 しかし、ブーンは再び謝る。

 

( ^ω^)「ごめなさい、だお」

 

ξ;;)ξ「ブーン?」

 

 

49 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 17:44:53.15 ID:uZv5eSLh0

 

( ^ω^)「僕は、一人も欠けることなくここを脱出したいと思っていたんだお。

       走り続けるには、雑念を抱かせたくなかったんだお」

 

――淀みなく皆を導かなければならない。

 

( ^ω^)「絶対にヴィップに戻る。魔導騎士の存在は正確に伝え、対策を案じる。

       それが目標。……勝手な意見だと思われても仕方が無いお」

 

――ヒーローはそれくらい自己主張するカラーじゃないといけない。

 

( ^ω^)「死にたくないのが、本音だお。皆が死んで欲しくないのも。

       子供みたいなわがままかも知れないお。でも、この赤は」

 

 彼は、首に巻かれたスカーフを握る。

 

――レッド・ナイトのように、皆と平和を作る、という僕の望み。

 

( ^ω^)「生きて、平和を作るための誓い」

 

 誰も、何も言わない。

 

 

50 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 17:48:27.93 ID:uZv5eSLh0

 

 停滞した空気を切り裂いたのは、トランペットの奏でるメロディだった。

 

 場違いなまでに華々しく煌びやかなファンファーレ。

 

 それは壁全面から響き、それに大音声が重なった。

 

『そろそろ砂時計の砂が落ち切ります。皆さん、ご健闘かと思われますが、メインイベントはこれからですよ』

 

『ご安心くださいね。わたくし達はヴィップ大使ご一行の行方を知りませんので』

 

『百人総出で全力で捜索させて頂きます。ええ、とそうですね、後は何かありましたか』

 

『そうそう、もし封印魔法で閉じこもっているなら早く出てくださいよ』

 

『魔導騎士団の解呪能力を集結すれば、ほとんど無意味ですから』

 

『あと一、二分と言ったところですか。それでは親愛なる暗殺者殿方、またお会いしましょう』

 

 放送終了、といったところか。

 

 始まったのも唐突なら、それが終わるのも唐突だった。

 

 

51 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 17:49:19.99 ID:zv8+ZiTg0

 

シエン

 

 

52 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 17:51:33.12 ID:uZv5eSLh0

 

( ^ω^)「走れるかお? ツン」

 

ξ 「ええ」

 

 支えを必要とせず、ツンは立ち上がった。

 ブーンもその横に並ぶ。

 

('A`)「おい、クソガキ。イエロー・ナイトの性格教えろ。俺は五英雄物語、知らねえんだ」

 

 その無防備な背後から、ドクオの蹴りが入れられる。

 

( ^ω^)「おっお。卑屈で寂しがり。人嫌いみたいな顔して実は仲間想いの優しいヤツなんだお。

       まあ、分かってると思うけど。まんまだおww」

 

(*'A`)「けっ。なんだよ身構えちまったじゃねえか! まんまって適当で良いんだな!?」

 

( ´∀`)「まさに照れてるそれだモナww モナも、モナ。グリーンのまんまなんだモナ」

 

( ^ω^)「ですお! 皆はぴったりはまるんですお。クーさんもブルーの、そう言いましたお?

       冷静で知的、常に全体を見る参謀役。スナオ家が誇る次代頭首!」

 

-)……ならばそうであろう。先ほどはらしくない言動をしてしまったしな」

 

 すまない、とクーは頭を下げた。

 ブーンは笑顔でそれに首を振る。

 

( ^ω^)「僕が変に抱え込もうとしたせいですお。気にしないで欲しいですお」

 

 

53 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 17:56:51.10 ID:uZv5eSLh0

 

('A`)「で、赤騎士さんよ。桃色乙女はどんなだったんだ? 泣き虫か、それとも腰抜けか?」

 

 その言葉に、ツンの顔に血の気が戻る。

 もしくは戻りすぎた。

 

ξ#「あら、挑戦的じゃない。ひねくれぼっちの寂しがり」

 

('A`)「あーん、なるほどな。ただのプッツン女か」

 

゚ー゚)「ここぞという時、素直になれない困った乙女。愛を知るも、戸惑う姿。

     そして、物語の最後にレッドと――」

 

ξ#「ストップ!」

 

( ^ω^)「おっおっおっww」

 

 全員の目に活力が宿る。

 暖かい空気が場に満ちる。

 

( ´∀`)「モナモナ。もう、出た方が良いかも知れないモナ」

 

゚ー゚)「ふふふ、そうだな」

 

('A`)「あ、これ二人にしてあげようってお兄さんお姉さんの心遣いだぞ?」

 

ξ///)ξ「うるさいうるさいうるさい!」

 

 ドクオは叩かれながらも、優しい目をしている。

 ひと段落したところで、彼は棚の裏の隠し戸を開けた。

 

 

54 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 18:00:49.54 ID:uZv5eSLh0

 

 部屋の隠し通路は急な階段で、かなり長いものだった。

 クーが蒼い光球を発し、視界はなんとかマシになる。

 

('A`)「城の下には船の発着場も兼ねてる出口がある。この階段はそこへの隠し通路でな。

    上の封印が突破されるまでは安心だろう。こっちの方が早く到着できる」

 

( ^ω^)「脱出におあつらえ向きってことだおね」

 

 そういうことだ、とドクオ。

 

ξ゚听「そこからは船で?」

 

('A`)「向こう岸と繋がっている洞窟がある。そこが塞がれちまってた場合、船に乗るしかない。

    上から矢が雨と降ってくる覚悟をしなけりゃならねえ」

 

-)「そうならないことを祈ろう」

 

( ´∀`)「モナが通れるほど大きい穴だってことも祈っておいてくれモナ」

 

 急いで降りている間、五人は会話を絶やさなかった。

 暗い階段が誰かを消してしまうのではないか。

 そんなことを恐れているかのように、互いの声でそれを紛らわしていた。

 

 ブーンの視界はぐらりと歪む。

 

 

55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 18:01:43.56 ID:e5FJL/NHO

 

ガガンもちゃんと投下すりゃいいのに

支援

 

 

56 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 18:03:30.62 ID:uZv5eSLh0

 

(; ω )(く、またかお)

 

 フラッシュする映像。

 

 蒼の光。

 

 突き出した腕。

 

 緑の壁。

 

 絡まり合う太いツタ。

 

 なんとか踏み止まるが、真後ろのツンがぶつかってしまう。

 

ξ;「きゃ、だ、大丈夫なの!? ブーン!」

 

('A`)「どうした」

 

 先導していたドクオが振り仰ぐ。

 

(;^ω^)「おっ、すまないお。ちょっと眩暈がしただけだお」

 

('A`)……頭をあんだけ強く蹴られてんだ。なんかあってもおかしくねえ」

 

( ^ω^)「いや、もうすっきりしたから大丈夫だお!」

 

 それからひたすらに下り、階段が終わる。

 

 

57 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 18:07:20.88 ID:uZv5eSLh0

 

 蓋をしていた岩を静かに押しどけると、そこには船舶用のドックがそこに広がっていた。

 河に面した壁面には、分厚い鉄の門が、大きく口を開けている。

 たゆたう水面は、やはり白と黒で極端な陰影を見せていた。

 通った道を振り返れば、粗く整えられた岩肌。

 なるほど、隠し通路は上手く隠蔽されている。

 

 ドクオは城内へと続く階段を目指す。

 

( ^ω^)「お? そっちは登り階段だお?」

 

('A`)「この階段の途中にもうひとつの隠し扉がある。そこから降りるんだ」

 

( ´∀`)「ホントよく知ってるモナ」

 

('A`)「こちとら何度も盗みに入ってんだ。こんくらい熟知してて当然よ」

 

 ブーンがドクオの後を追う。

 足音が三人分さらについていく。

 

-)「まだか?」

 

('A`)「次の踊り場だ。……見えた」

 

 音も無く走り、ドクオは壁にかけられた絵画に手をかける。

 

 かちん。

 

 軽い音とともに額が割れた。

 

 

58 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 18:08:33.69 ID:uZv5eSLh0

 

 

 

 

 そして、酸が溢れ出た。

 

 

 

 

 

59 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 18:11:20.84 ID:uZv5eSLh0

 

(A)「ああああああああ!! うあっうあああああああ!!」

 

 黄色い液がドクオの身体を濡らすと同時の悲鳴。

 とっさに液体から身を交わそうとしたのが彼を即死から遠ざけた。

 果たしてそれは、正しい選択だったのか。

 

 浸された左半身が煙を上げる。

 衣服は焼け焦げたように失われていく。

 手先が即座に赤くただれ、腕の脂肪が露出する。

 蝕むように靴が、足が、すねが溶かされる。

 

( ゚ω゚)「ドクオ!!」

 

ξ;「え? ドクオ? え!?」

 

(#´∀`)「二人とも離れるモナ!」

 

 モナーはツンとブーンの腕を引っ張る。

 二人の立っていた場所まで、黄色い酸は流れ出していたのだ。

 

(A#;「あああああああ!! くっそおおお!! いつっ、いてええええああああ!!」

 

 すえた匂い。

 じゅう、とドクオの身体は溶けていく。

 顔をかばった左腕は、もう骨が露出していた。

 

 

60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 18:12:45.68 ID:hdEcUt3vO

 

支援

 

 

61 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 18:14:10.69 ID:uZv5eSLh0

 

; -)「今中和する! 『中立への回帰』!」

 

 蒼の光が液体となって黄の水に混じった。

 双方の色素がなくなり、侵食は停止した。

 肉から噴出していた煙も消える。

 

 ブーンはドクオに駆け寄り、その身を抱き起こす。

 彼は手にどろどろの血肉を感じた。

 

(A#;「ちく、じょう……、野郎……俺がこっちを、ここをえら選ぶこと、ことしし知って」

 

( ゚ω゚)「ドクオ! 喋るなお! クーさん早く治療を!」

 

ξ;;)ξ「ああああ、そんな、そんなっ」

 

(#;「ははは、ああっあ゛っ。はは、何がじゅっ! あああ! 何が熟知だ!!

    お笑いっ種っだぜえ! ははははははは!」

 

(#゚ω゚)「黙れおドクオ! クーさん早く!」

 

- ))

 

 クーは首を横に振った。

 代わりにモナーが腰に下げた袋から葉を取り出し、歩み寄る。

 

 

62 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 18:15:20.92 ID:zv8+ZiTg0

 

しえん…

 

 

63 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 18:17:16.33 ID:uZv5eSLh0

 

(#;「そそ、そのその葉っぱだがよ、俺おおおオレの服にも入ってんぜ。

    くくくくちくちくちにいれてくれねえか? もっ、もっう、手がうごかっうっうご」

 

 ブーンは、焼けた服の胸ポケットから、半分に千切れたそれを見つける。

 モナーがブーンに渡した薬草だった。

 

( ´∀`)「一緒に噛むんだ」

 

 モナーはさらに二枚を足して、ドクオの口に入れてやる。

 がたがた震える顎が、その葉をゆっくりと噛み始めた。

 

( ゚ω゚)「モナーさん、ドクオは……」

 

 手でその言葉を制するモナー。

 

(#;「へへへへ、おも、思ったとおりだ。これは死の苦痛軽減とかってんだ、ろ?

    アンタの、みとっ看取り受けられててて、おれぁ幸運だなあああっはっはははは」

 

( ´∀`)「言い残すことはあるか」

 

(#;「楽になっ、なってきたぜ。ありが、とうよおお。そっ、うだな、ひとっつだけあるぜ」

 

(  ω )「ドクオ」

 

(#;「お前ら生きろよおぉ」

 

 

64 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 18:20:12.42 ID:uZv5eSLh0

 

 それきりドクオは口を聞かなかった。

 虚ろな眼が光を失った。

 クーが震えるツンの肩を抱いた。

 モナーは開けられたままのまぶたを、優しく閉ざしてやる。

 

(-A#;

 

(  ω )「行くお。時間を無駄にはできないお」

 

ξ;;)ξ「ええ」

 

 ひどく寂しいところに放置された身体。

 ブーンは、それに一度背を向けて、しかし、振り返る。

 

 ポケットから「silent」と「conceal」のフラスコを取り出す。

 かなり軽くなったふたつの中身を物言わぬ骸に注ぐ。

 

 せめて、雑音と不躾な眼に曝されないように、と。

 

 ぼんやりした輪郭になったドクオは眠り続ける。

 

 孤独に、眠り続ける。

 

 

65 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 18:25:11.06 ID:uZv5eSLh0

 

 他の抜け道を知る者はいない。

 一人を欠いた逃亡者達は、ドックに戻ってきていた。

 陸に上げられた小船が何艘か天井から吊られている。

 それを使うしか、手段は残されていないようだった。

 

( ^ω^)「まずは船を降ろすんだお。見たところトラップはないはずだお」

 

ξ 「ええ、急ぎましょう。橋の上に敵がいないとも限らない」

 

( ´∀`)「レバーを操作しないといけないモナ」

 

 三人が手分けをして内部を動き始めた時、クーだけが立ち止まっていた。

 小走りの遠ざかろうとする背中に静かな声をかける。

 

-)……ひとつだけ、もう少しマシな方法を思いついた」

 

(;^ω^)「でも、船以外に河を渡るなんて」

 

-)「船では小回りが利かない。この河の流れも遅い。恰好の的になってしまう」

 

( ´∀`)「話してみてくれモナ、クーさん」

 

 

66 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 18:29:36.07 ID:uZv5eSLh0

 

 クーは三人に、簡潔にその方法を伝えた。

 

 アイディアとしては、彼女にしか思いつかないものだ。

 しかし、大胆であり、実現可能かは誰にも予想できない。

 絶対はありえない。

 だが、それが最上の策であることは確かだ。

 ブーンはそう思い、頷いた。

 

( ^ω^)「信じますお。クーさん」

 

-)「スナオ家の魔力を侮るなよ。だがな、大きな問題がひとつある。

     詠唱にひどく時間がかかるんだ。効果が現れるのはすぐなんだが」

 

 彼女が仲間に求める行動は、すぐに理解される。

 無防備な時間は長い。

 周囲を構っている暇はないのだ。

 

ξ゚听「その間、私達が周りを守れば良いのね」

 

( ´∀`)「絶対防壁モナーの両腕が届くところは、いつだって完璧な安全地帯だモナよ」

 

( ^ω^)「おっお、任せてくださいお。僕が歩兵を相手しますお」

 

)……ああ、頼んだぞ」

 

 寂しげな微笑み。

 それに気付いてしまったモナーは、しかし、何も言わなかった。

 

 

67 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 18:33:31.11 ID:uZv5eSLh0

 

 黒い鉄扉の脇からは、地続きに、断崖の際の道まで出ることができる。

 柵の設置はされておらず、舗装さえも施されていない。

 道幅は大人が余裕をもってすれ違えるかどうかという程度。

 白黒の河と岩壁とに挟まれた足場に、四人が立っていた。

 

- )――栄華を極めし万物滅びて、流転成す、これ理なり」

 

 クーは厳かなる言霊を紡ぎ出す。

 

(  ω )(来るなら、橋の上からの狙撃か、ドックから)

 

ξ゚听)ξ(鷹の目はひとつとして敵を見逃しはしないわ)

 

( ´∀`)(……)

 

 地鳴りが始まる。

 それはドックからでもあり、上空、すなわち城、橋からでもあった。

 心臓が一際大きく拍動する。

 

 来た。

 

 城壁から発せられる、低い明澄な声。

 

『ごきげんよう、ヴィップ大使ご一行。ようやく再会が果たせました』

 

 そして、凄まじい暴力が、荒れ狂う殺意が彼らを襲う。

 

 

68 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 18:38:36.54 ID:uZv5eSLh0

 

 無数の矢が降り注いだ。

 

 モナーはそれを大きな盾を細かく動かし弾く。

 長い腕をすべて使い短槍で叩き落す。

 さらには鎧をも壁とすることでクーを守る。

 

 

 落とされる岩石の数々。

 

 ツンは見極め、危険であると見たものにだけ爆薬を当てる。

 岸壁に矢のつかえを生やすことで、わずかに軌道のみを逸らす。

 放たれる直線が敵を絶命せしめ、岩とともに崖を転がらせる。

 

 

 絶えることなく兵士が迫った。

 

 ブーンは押し潰されないよう、蹴り、殴り、斬る。

 先頭で、前後から押された兵士は河に落ち、そのまま沈んでいく。

 確実に一人一人を倒しては、身を引き体勢を立て直す。

 

 どれだけ経ったのか、誰にも分からない。

 ただひたすらに長い間。

 彼らは仲間を守り続けた。

 

 

69 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 18:41:45.47 ID:jKw4YMNgO

 

紫煙

 

 

70 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 18:50:15.97 ID:uZv5eSLh0

 

 

 盾は細かな傷を増やした。

 鎧が装甲を抉られる。

 

 火薬入りの包みが尽きた。

 矢立てもどんどん軽くなる。

 

 剣の先が丸くなっていった。

 斬るでなく叩く。叩き、抗う。

 

 

 防壁の守護。

 

 射手の狙撃。

 

 剣士の反撃。

 

 そして、

 

 詠唱の終結。

 

 

 

 

71 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 18:52:59.04 ID:uZv5eSLh0

 

 

- )――滅せず屈せず不変の到来、断絶の刻よ、今、我が身に」

 

 

 クーが杖をかざし高らかに唱える。

 

 

-)「『不滅の氷河』」

 

 

 彼女は、仲間達へと笑顔を向ける。

 

 

゚ー゚)「走れ、英雄」

 

 

 河へ、その身を投げながら。

 

 

 

72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 18:53:05.54 ID:zv8+ZiTg0

 

しえn

 

 

73 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 18:56:21.12 ID:uZv5eSLh0

 

ξ;「クー!」

 

 掲げたままの杖は、腕とともに水面に残る。

 彼女の身体から発した冷気がそれを凍りつかせ留めたのだ。

 

( ゚ω゚)「クーさん!」

 

 急激に気温は低下し、生ぬるい風が逃げるようになくなった。

 

(  ∀ )「やはり、か……」

 

 そして、河は流れを止め、完全に凍てついた。

 

 攻撃が止まっていた。

 

( ´∀`)「二人とも、あの塔まで走るモナ」

 

 指差す先は、民衆が河辺へ降りるための乗降施設。

 

ξ゚听「クー、貴女、まで」

 

( ゚ω゚)「行くおツン」

 

(#´∀`)「走れ!! すぐ追いつかれるぞ!!」

 

 

74 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 19:01:25.67 ID:uZv5eSLh0

 

 

 一旦止んだ攻撃が再開される。

 

 三人は的を絞らせないようばらばらに走った。

 

 足元は霜が張り、靴の裏がトラップされ、その度に剥がれる。

 それは滑らないという意味では好都合だった。

 

 一言も誰も口を聞かない。

 ジグザグに走り、距離も置いている。

 喋れるわけがなかった。

 

 ブーンは、重力加速のついた矢を左肩に受け、たたらを踏んだ。

 

(#゚ω゚)「おおおおおおお!!」

 

 だが。

 

 止まらない。

 止まれない。

 

 散った仲間は生きろと言った。

 散った仲間は道を作った。

 

 駆けろ!!

 

 

 

75 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 19:04:29.42 ID:uZv5eSLh0

 

 乗降施設には、ツン、ブーンの順に到着した。

 モナーが後から駆けてくる。

 彼は船着場入り口の前で立ち止まると、盾を構えた。

 

( ゚ω゚)「モナーさんなにを――」

 

 瞬間、ブーンは理解した。

 

 硬質な物が、着地する音。

 

 氷がわずかに砕け、白煙を上げる。

 

 立ち上がった白と黒の人型。

 

 

 

      (<●><●>)

 

 

 

( ゚ω゚)「むちゃくちゃだお」

 

 

 さらに空から降る複数の魔導騎士。

 痛みを感じない体は、どれほどの高地から落ちても問題ではない。

 バランスを崩して倒れるも、すぐに立ち上がる。

 ひしゃげてしまった脚など、ものともしない。

 

 

76 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 19:06:39.27 ID:zv8+ZiTg0

 

しえーん

 

 

77 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 19:07:55.96 ID:uZv5eSLh0

 

(#´∀`)「すぐに追いつく、先に行け!」

 

ξ;「モナーさん! 無事で!」

 

 彼女の言葉は最後まで彼には届かなかった。

 魔導騎士の一人が振り下ろした剣がモナーの盾に弾かれる。

 その高い金属音が他の音を掻き消してしまった。

 さらに別の魔導騎士の剣戟がモナーへ。

 ブーンの太刀筋と同じくそれは鋭い。

 

(  ω )「くそ! ツン! 行くお!」

 

 短槍が胸部装甲を貫いた。

 魔導騎士の振り被った刃が氷河へ落ちる。

 

( <●><>)――

 

 その一体が崩れ落ちる瞬間、モナーは鎧を蹴り飛ばして槍を抜く。

 彼にかかったのは、血飛沫ではなく色とりどりの液。

 

(#´∀`)「『絶対防壁』を容易く崩せると思うな!」

 

 叫びを、ブーンは背中で聞いた。

 

 

78 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 19:11:05.97 ID:uZv5eSLh0

 

 船着場から崖の上まで登るのに、手段はふたつあった。

 魔力と水圧による自動乗降設備。

 長く続く螺旋階段。

 前者は河の凍結によって、完全に停止してしまっている。

 ツンとブーンは階段を選んだ。

 

 しかし、そこへと通じる柵は、錠前によって封鎖されている。

 固く閉じられた階段への門。

 その錠は、おかしなことに手前から、つまり、河の方からかけられていた。

 二人は狼狽した。

 

(;゚ω゚)「爆薬でどうにかならないかお?」

 

ξ;「もうないわ!」

 

 モナーの咆哮が耳に木霊する。

 時間は、あまり残されていない。

 

ξ;「私は鍵を探してみる。ブーンは壊せないか試して!」

 

 言うが早いか、ツンは詰め所と思われる部屋へと飛び込んだ。

 ブーンは剣を振り上げ、柄尻を振り下ろす。

 

 堅い、手応え。

 

 

79 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 19:14:49.19 ID:uZv5eSLh0

 

 

(;゚ω゚)「壊れろ、壊れろ、壊れろ」

 

 振り上げ、下ろす。

 

 壊れろ、と自然に繰り返していた。

 

 

(;゚ω゚)「壊れろ、壊れろ、壊れろ」

 

 ぶうん、がきん、ざり。

 

 狙いがずれて、金具に引っかかった指の肉が削れる。

 

 

(;゚ω゚)「壊れろ、壊れろ、壊れろ」

 

 肩から流れた血で、柄がぬるりと滑る。

 

 衝撃の後、腕に、手に、痺れが走る。

 

 

(#゚ω゚)「壊れろ! 切れろ! 外れろおおおおおお!! くっそおおおおおお!!」

 

 全身を使った、渾身の一振り。

 

 

 ついに、錠が壊れた。

 

 

 

80 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 19:19:33.25 ID:uZv5eSLh0

 

 ブーンは振り返り、ツンの姿を探す。

 開け放たれた戸に、怒鳴るように呼びかけた。

 

(; ω )「開いたお! ツン、あい――」

 

 彼は自分の起こす音が大きすぎて気付いていなかった。

 

 ひとつは、氷河で起こる着地音が、都合、百を超えたことに。

 

 ひとつは、先ほどまで聞こえていた仲間の咆哮が途絶えたことに。

 

 ひとつは、乗降施設の入り口がおびただしい量の植物が覆われていたことに。

 

 そして、最後にもうひとつ。

 

 

81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 19:21:42.05 ID:qzMTxbqV0

 

支援

 

 

82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 19:22:20.13 ID:hn7B3cjoO

 

支援支援

 

 

83 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 19:22:46.03 ID:uZv5eSLh0

 

 

 

 

 その植物の壁は、モナーの体を中心に形成されていたことに。

 

 彼は、今の今まで気付く術がなかった。

 

 

 

 

 

84 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 19:23:06.51 ID:zv8+ZiTg0

 

しぇん

 

 

85 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 19:24:11.21 ID:uZv5eSLh0

 

 大きな鎧の隙間という隙間から、太く堅いツタが伸び、絡まりあっている。

 甲冑の中にいるモナーの肉体は、内側から食い破られるように裂かれていた。

 成長した植物が、彼の頭を天へと持ち上げている。

 光の加減か、その表情は晴れやかにも見える。

 もしかしたら、何人かの魔導騎士を道連れにできたのかもしれない。

 

 いまや、船着場へと通じる空間は、緑に埋もれ、完全に外界から隔絶されていた。

 

 ブーンはその近くに立ち尽くしていたツンを発見する。

 彼女は、塞がった出入り口を向いたまま語る。

 

ξ 「モナーさんが、来て、言ったわ」

 

――絶対防壁の奥の手も奥の手。秘策中の秘策だ。

 

ξ 「魔力を吸って急速に成長する、寄生植物なんだって」

 

――これは一度も使ったことがないんだが……、クーさんの魔力があればなんとか。

 

ξ 「種を飲み込んで、すぐにね」

 

――植物は良い。心穏やかになれる。そうだろう? さっきから白黒ばかりで息が詰まる。

 

ξ;;)ξ「笑ったのよ」

 

――人間は、緑に囲まれて、安らかに笑わってないと駄目なんだモナよ。

 

 

 ブーンの見える世界が歪んだ。

 

 

86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 19:27:22.54 ID:EoP3EVudO

 

つC

 

 

87 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 19:28:50.59 ID:uZv5eSLh0

 

 

 螺旋階段は中央が吹き抜けになっている。

 天を仰いだところで、その高さは知れなかった。

 幅の広さも相まって、孤独を引き立てた。

 

 黙々と二人は段を一歩、また一歩と確実に登って行った。

 重い足取りだが、皇帝ワカッテマスとの約束、解放までは着実に近付いていた。

 

 心が切り裂かれていても、人は動けるもんだな。

 半ば自嘲気味にそう思うブーン。

 しかし、彼は努めて絶望から意識を遠ざけた。

 

 肩の矢は抜いても、なお、痛みを残した。

 皮肉なことにそれが彼に彼自身の生命を実感させた。

 ツンの応急処置のおかげで、左腕の流血はおさまっていた。

 それは、モナーが彼女に託した薬草の効能だった。

 

 階段は続く。

 

 

 

88 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 19:32:33.97 ID:uZv5eSLh0

 

 

 半分を登った頃だろうか。

 ようやく階段の外周に窓が現れた。

 水位の上昇に備えて、低層では作られなかったのだろう。

 彼らはどちらからともなく、その前で立ち止まった。

 狙撃されるのではないだろうか、という考えは浮かばないようだった。

 

 矢は飛んで来なかった。

 氷河を見下ろすと、死体から心臓を抜き取っている魔導騎士の姿が見える。

 他の兵士はつるはしを手に、クーが身を投げた辺りを砕いている。

 

 二人は自身がいる塔の根元に、火が焚き付けられているのに気付いた。

 だが、どれだけ焼き尽くすべく松明が当てられようと、植物に燃え移らないようだった。

 何人かの兵士が入れ代わり立ち代り作業し、休憩している。

 

 ツンは弓に矢を番えて亡骸への冒涜を食い止めようとした。

 ブーンはその手を抑えて首を横に振る。

 わずかな視線の交錯の後、弓矢は背に戻された。

 

 昼なのか夜なのかわからない完全なる白の空。

 その中にぽっかりと口を開けた黒の円は、太陽か、月か。

 どうでも良いことだな、とブーンは思う。

 

 なおも、階段は続いた。

 

 

 

89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 19:33:58.92 ID:5sPByXsTO

 

キテター!

 

 

90 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 19:36:45.44 ID:hn7B3cjoO

 

っC

 

 

91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 19:43:00.78 ID:KbcPMF7mO

 

またさるか?

 

 

92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 19:46:02.61 ID:zv8+ZiTg0

 

さるったかな?

 

 

93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 19:47:50.37 ID:KbcPMF7mO

 

時間微妙なんだよな

 

 

94 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 19:59:37.43 ID:zv8+ZiTg0

 

 

 

95 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 20:01:16.84 ID:uZv5eSLh0

 

(; ω )「……くうっ」

 

 また、ブーンの視界から直線が消えた。

 全てが混ざり合っていく。

 点滅する細切れの場面場面。

 

 桃色。

 

 刃の生えた女。

 

 倒れた女性は……。

 

ξ 「ブーン」

 

 大丈夫? という声が遠くから聞こえる。

 閃光のように湧いた女性の像が、振り向いたそこにいる女性と合わさった。

 

 ああ、そうだ。

 

 思い出してしまった。

 そうだった。

 

 でも、でも、せめて最後まで。

 最後まで行かせてくれ。

 

(  ω )「大丈夫だお。ツンこそ疲れてないかお?」

 

ξ 「まだまだ歩けるわ」

 

(  ω )「ツン」

 

 

96 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 20:04:42.45 ID:uZv5eSLh0

 

 

 

 

 ここまで、ありがとう、だお。

 

 

 

 

 

97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 20:05:20.22 ID:1aLzvqILO

 

支援

 

 

98 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 20:05:59.42 ID:hn7B3cjoO

 

支援

 

 

99 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 20:08:50.23 ID:uZv5eSLh0

 

 

 彼らは、それから残りの半分を長い時間をかけて登った。

 

「ブーン」

 

「なんだお?」

 

「あなたのこと、愛してるわ」

 

「知ってるお」

 

 足音は遅々として、時折、止まることもあった。

 

「ツン」

 

「なあに?」

 

「きみのこと、愛してるお」

 

「馬鹿ね、気付かないわけないじゃない」

 

 愛していた、ではない。

 現在形。

 今、愛している。

 

 いくつ通り過ぎたのだろう、ある窓辺で、二人は口付けする。

 

 

 

100 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 20:12:07.08 ID:uZv5eSLh0

 

 

 モノクロの中で唇は際立って柔らかく、優しい。

 

 感情に色があるならば。

 

 感情に色があるならば。

 

 一体、ここを包むのは何色なんだろう。

 

 頬を熱いものが伝う。

 お互いの肌から伝わるぬくもりに、生を実感する。

 いつかの夜に交わしたぬくもりは、今もそこにある。

 

 華奢な肩を、傷ついた小さな背中を、剣士は強く強く腕に抱く。

 

 

 階段はついに終わった。

 

 

 

101 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 20:12:43.58 ID:hn7B3cjoO

 

支援支援

 

 

102 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 20:13:28.44 ID:uZv5eSLh0

 

 最後の一段を踏みしめると、ブーンは何気なく吹き抜けを見下ろした。

 炎が吹き込んでいるのを認める。

 絶対防壁は、ついに破られてしまった。

 

 一方、ツンは河を望める窓の外を見下ろしていた。

 船舶ドックから横に少しいったところに、目立つクレーターが確認できる。

 永遠の氷河がその主を失っていた。

 

 鎧の足音がはるか下方から響いてきた。

 二人は急ぐでもなく、ゆっくりとした足取りで出口へと進んだ。

 

 この扉をくぐった先は、向こう岸扱いのはずだ。

 

 皇帝ワカッテマス、約束は守れよ。

 約束は必ず果たすから。

 

 ブーンが呟いた。

 

 

103 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 20:15:20.90 ID:uZv5eSLh0

 

 重厚な扉の向こうには、城下町が広がっていた。

 しかし、やはり色は取り戻されていない。

 住居の立ち並ぶ地面は、河川への降り口より五メートルほど低い位置にあった。

 町を一望できる高台。

 黒の中に、点々と白が明かりのように広がっている。

 

ξ゚听「綺麗ね」

 

( ^ω^)「綺麗だお」

 

 ブーンは思う。

 階段を上がってくる兵士、魔導騎士。

 彼らが少しでも友好的なら、一緒に眺めてやってもいい。

 そうだ、ドクオならなんと言って「綺麗だー」なんて言うツンを茶化すのだろう。

 多分モナーさんが上手いこと相槌を打つんだ。

 クーさんのツッコミが入って、ツンは戸惑うんだろうな。

 三人の真ん中で誰に怒ろうか迷って顔を赤くするはずだ。

 

ξ゚听「ねえ。本当に、私達は何日か前に知り合ったのかしら」

 

 ツンは同じようなことを考えていたのだろうか。

 突然、そんなことを言った。

 

 

104 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 20:17:44.95 ID:uZv5eSLh0

 

( ^ω^)「皆、とても楽しい仲間だお」

 

ξ゚听「ええ、信じられないわね」

 

 耳に届く足音が大きくなってきた。

 しかし、彼らはあまり気にしていない。

 

( ^ω^)「もう二度とあんな気の合う仲間ができるかわからないお」

 

ξ゚听「ブーンならできるわよ。だって、生きているのよ」

 

 これからがあるじゃない、とツンは続けた。

 頷いて、ブーンが彼女を見つめた。

 

( ^ω^)「ツン、言わなければならないことがあるお」

 

ξ゚听「なあに?」

 

( ^ω^)「……」

 

 腕を、ゆっくり伸ばして、ツンを抱きしめる。

 確かなぬくもりがそこにある。

 

 でも、終わらせなければならない。

 

 彼は、その言葉を発する。

 

 

105 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 20:18:57.63 ID:uZv5eSLh0

 

 

 

 

 助けられなくて、ごめんお。

 

 

 

 

 

106 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 20:22:37.49 ID:KbcPMF7mO

 

しえ

 

 

107 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/03/31() 20:26:18.17 ID:ORRH30b1O

 

be…

 

 

108 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 20:28:30.62 ID:uZv5eSLh0

 

 

( ;ω;)「助けられなくて……ごめんお」

 

 ツンの身体が、音も無く、崩れだす。

 

 白い肌が、金髪が、光に変換される。

 

 

 

ξ゚ー゚「最後に、助けてくれたわ」

 

 笑顔はおぼろげになって、愛しいその声も遠くなる。

 

 ブーンが抱いた背中が次第に感触を失っていく。

 

 

 

( ;ω;)「自己満足だお。君を苦しめて、それでも、一緒にいようとした」

 

 

ξ゚ー゚「ううん、それでも。それでも一緒にいてくれた」

 

 

( ;ω;)「許してくれお。君の身体を辱めたお」

 

 

ξ゚ー゚「馬鹿ね。そんなの、とっくに許してるわ」

 

 

 

109 名前: s7L3t1zRvU 2009/03/31() 20:30:42.11 ID:uZv5eSLh0

 

 

 ツンの身体がほどけるように、とけるように、無くなっていく。

 ブーンの腕の中にあったぬくもりが失われていく。

 

 光球が増える。

 愛する女性の身体がなくなるたびに。

 周囲が明るくなる。

 守ると決めた女性が消えていくたびに。