ζ(゚ー゚ あな素晴らしや、生きた本 のようです

 

526 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 21:58:42 ID:XaWEGaeMO

第四話後編投下しマティーニ

 

 

527 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 21:59:39 ID:XaWEGaeMO

 

 夜が明けて。

 

('`*川「あら……

 

 起床したペニサスは、リビングのテーブルにメモ用紙が置かれているのを見付けた。

 『仕事に行ってきます。 河内』、とのこと。

 

('`*川「もう行っちゃったの……朝ご飯、食べてませんよねえ」

 

 ミルナの布団は丁寧に畳まれている。

 残念ですね、と頬に手を添え、ペニサスは小首を傾げた。

 

 溜め息。それから、窓の前に立った。

 

 鍵に近い場所に、厚紙がガムテープで固定されている。

 上部のガムテープを剥がして覗き込んでみると、たしかに穴があいていた。

 

('`*川「凄いですねえ。……ガラス、強いやつに替えた方がいいかしら」

 

 感心しつつも、これからのデレのことを考えると不安になる。

 時間と金額はどれほどかかるのだろうか。

 とにかく、昼頃に業者を呼ばなければ。

 

 

528 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:00:47 ID:XaWEGaeMO

 

 と、そこへ、デレの声が飛んできた。

 

ζ(゚ー゚「あ、お母さん、おはよう」

 

('`*川「おはようございます」

 

 制服姿で鞄を持ったデレ。

 リビングには入らずに、ひらひらと手を振った。

 

ζ(゚ー゚「じゃあ行ってきます!」

 

('`*川「もう? ご飯は食べませんか。ご飯って言っても冷凍食品ですけど」

 

ζ(゚ー゚「今日はいいや」

 

('`*川「まあ……――お弁当はどうなさるの?」

 

ζ(゚ー゚「学校で買うよー」

 

 じゃあね、とデレが玄関へ消えた。

 ドアが開き、閉まる音。

 

 ペニサスは唇を尖らせる。

 

('`*川「もう……

 

 

529 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:01:23 ID:XaWEGaeMO

 

 

 

ζ(゚、゚……ふう」

 

 外に出たデレは、ほっと息をついた。

 包帯が見えないようニーソックスを穿いたおかげか、怪我がバレずに済んだ。

 

ζ(゚、゚(大体塞がったし、包帯やめよっかなあ……

 

 

530 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:01:47 ID:XaWEGaeMO

 

 

 

第四話 あな可笑しや、時代小説・後編

 

 

 

.

 

 

531 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:02:43 ID:XaWEGaeMO

 

( д )(あれは何だったんだろう)

 

 バス停に立ちながら、ミルナは夜のことを考えていた。

 柳色の本に書かれた物語。まさか、あれが現実のものになるとは。

 気味が悪い。

 

 デレはどういうことか知っているようだった。

 部屋に戻る際、「後で訊いておきます」と言っていたが、誰に何を訊くつもりなのだろう。

 

( д )……あ、来た)

 

 やって来たバスにミルナが乗り込む。

 バスが走り出すと、角から現れた車が、その後を追い始めた。

 

(*)「普通のリーマンっぽいな」

 

`ハ´)「出勤するところアルネ。――尾行なんて出来るアルか」

 

( ´ー`)「やってやんヨ。……今日は下調べだ」

 

 

532 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:03:02 ID:XaWEGaeMO

 

(*)「そういやお前らバイトは?」

 

( ´ー`)「休む」

 

`ハ´)「どうせシラネーヨに付き合わされるから休むアル」

 

(*)……後で怒られるんじゃない?」

 

( ´ー`)「多分な」

 

 

 

*****

 

 

533 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:03:06 ID:UxIZgPDk0

sssssss支援っつぁい!!!

 

 

534 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:04:00 ID:XaWEGaeMO

 

 

 

 いつも通りに授業が進み、放課後。

 

 デレが帰宅の準備をしていると、友人、素直キュートが声をかけてきた。

 

o*゚ー゚)o「やっほ、デレちゃん!」

 

ζ(゚ー゚「ん、キュートちゃん」

 

o*゚ー゚)o「足の調子はどう?」

 

ζ(゚ー゚「ほとんど塞がったかな。まだちょっと痛みはあるけど」

 

o*゚−゚)o「でも、跡とか残っちゃうんでしょ?」

 

ζ(゚ー゚「足だもん、大丈夫。あんまり目立たないよ」

 

o*゚−゚)o「そうだけど……

 

 

535 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:04:57 ID:XaWEGaeMO

 

ζ(゚ー゚「気にしてくれてありがとうね。――じゃあ、ばいばい」

 

o*゚ー゚)o「真っ直ぐ帰るの?」

 

ζ(゚ー゚「ううん、図書館に寄ってくよ」

 

o*゚ー゚)o

 

ζ(゚ー゚

 

o*゚ー゚)o(チラッ)(チラッ)

 

ζ(゚、゚(うおお無言の圧力)

 

 

 

 「行きたいってわけじゃないけど暇だから」と言い張るキュートを連れ、学校を出る。

 

 校門の傍に車が停まっていた。

 見覚えがある。

 

ζ(゚、゚「内藤さん?」

 

 車に駆け寄ると助手席側の窓が開いた。

 ツンと、その向こうに内藤。

 

 

536 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:06:23 ID:XaWEGaeMO

 

ξ゚听「こんにちは」

 

ζ(゚、゚「こんにちはー」

 

o*゚ー゚)o「お久しぶりです!」

 

(*^ω^)「おおおっ、キュートちゃん!」

 

ζ(゚、゚「どうしてここに?」

 

(*^ω^)「迎えに来たんだおー」

 

 昼頃、図書館へ行く旨を内藤にメールで伝えていた。

 恐らくデレの足を気遣って来てくれたのだろう。

 

ζ(゚ー゚「ありがとうございます」

 

(*^ω^)「いいお、いいお。キュートちゃんも来るかお?」

 

o*゚ー゚)o「お邪魔じゃなければ――

 

 デレが後部座席のドアを引く。

 そこでようやく、もう1人の存在に気付いた。

 

 

537 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:07:17 ID:XaWEGaeMO

 

( ・∀・)「やあ」

 

ζ(゚、゚「モララーさん!」

 

o*゚ー゚)o「誰? わっ、着物だ」

 

ζ(゚、゚「図書館に住んでる作家さん。……お邪魔します」

 

 運転席の後ろにモララー、助手席の後ろにキュート、

 2人の間にデレ、という配置で乗り込む。

 

 出発ー、と呑気な声で内藤が言って、車を発進させた。

 

( ・∀・)「久々に外に出たくて。……と言っても車中だけどさ」

 

o;*゚ー゚)o「ま、眩しい……イケメンすぎて眩しい……

 

(*・∀・)「えー、そんな……ぜ、全然格好よくないよ、普通だよ」

 

( ゚ω゚)「……てめえで普通だったら僕は何だ? 人間以下か?」

 

ξ゚听「見苦しい」

 

(;゚ω゚)「ど、どっちの意味!? 嫉妬が? 顔が!?」

 

 

538 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:08:44 ID:XaWEGaeMO

 

(*・∀・)「イケメンかあ、参ったな。えへへ」

 

 照れたように頭を掻くモララーを眺めていたデレは、

 そういえば、とキュートに向き直った。

 

ζ(゚ー゚「モララーさんって、キュートちゃんの好みのタイプそのまんまだよね」

 

o*゚ー゚)o「え?」

 

ζ(゚ー゚「格好いいし、細身だし……

 

ξ゚听「少なくともクックルよりは、あなたの好みに近いと思うけれど」

 

(*・∀・)(何でここでクックル?)

 

 

539 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:09:19 ID:XaWEGaeMO

 

o*゚−゚)o

 

o*゚−゚)o「いや。たしかに私、格好いい人が好きだけど。

      たしかに、たしかにね、あの人と付き合うぐらいなら、

      モララーさんを選ぶよ? うん。あの人ごついし。好きじゃないし」

 

o*゚−゚)o「ああ、でも……でもさあ、ほら、何かさあ、

      モララーさんは美形すぎる、かなあ? 逆に気が引けるっていうか。

      あと何か、なよっとしてるし。ね?」

 

o*゚−゚)o「それに比べてあの人はさ、男気? そういう格好よさはあるよね。

      まあ、あるっていうか、それしかないっていうか。

      中身はイケメンなんじゃないかな? だよね。そうだよ。別に好きじゃないけど」

 

ζ(゚、゚「ごめんなさい話振った私が悪かったです」

 

ξ゚听「意見がぐっちゃぐちゃね」

 

( ;;

 

ζ(゚、゚「あれっモララーさんがさりげなく泣いてる!? 何がスイッチだったの!?」

 

( ^ω^)(『なよっとしてる』発言だろうなあ)

 

 

540 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:10:24 ID:XaWEGaeMO

 

 

 

 デレが必死にモララーを励ましている内に、図書館に到着した。

 

 入館するや否や、内藤は、カウンターの奥にあるドアを開けた。

 

( ^ω^)「クックルー! キュートちゃん来たから、相手してあげてくれおー!」

 

o;*゚ー゚)o「!?」

 

 階上からクックルの返事。

 内藤が退き、キュートを手招きする。

 

(*^ω^)「行ってらっしゃいおー」

 

o;*゚ー゚)o……そ、そこまで言うなら行くしかないですね」

 

 別に強制しているわけでもないのだが、

 キュートはあくまで「仕方ない」というスタンスは崩さずに、2階へ上がっていった。

 

 「本」の話をするには、キュートはいない方がいい。

 彼女は本や図書館に関する詳しい事情を知らないから。

 

 それに何より、キュートの目的はどうせクックルなのだ。

 

 

541 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:11:55 ID:XaWEGaeMO

 

( ^ω^)「――さてさて。本題だお」

 

 内藤が振り返る。

 デレ達もテーブルへと視線をやった。

 

(  ν )

 

 手前のテーブル。

 本で顔を隠すニュッが、そこにいた。

 

ζ(゚、゚……ニュッさん、なかなかキュートちゃんに慣れませんね」

 

ξ゚听「逃げ出さないだけマシになったと思うわよ」

 

 

 

*****

 

 

542 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:13:03 ID:XaWEGaeMO

 

 

 

;)「お、俺の本が……とんだご迷惑を……

 

 デレがミルナと本のことを説明すると、モララーは泣きじゃくりながら土下座した。

 額を床に押し付け、ごめんなさいごめんなさいと繰り返す。

 

ζ(゚、゚「こ、これといった被害もありませんし、モララーさんが悪いわけでも……

 

( ;;)「おばっあびゅ、あばばばばばば」

 

( ^ν^)「うるせえ死ね」

 

( ;;)「わあああああああああん!!」

 

(;^ω^)「ニュッ君、人を踏んじゃいけません!」

 

( ;;)「ああああん、昔のニュッ君はいい子で可愛かったのにぃいいい!!

      昔は、こ、こんな、小っちゃくて、そのくせ妙に辛辣で上から目線で……

      あれ? 今と変わんない?」

 

ξ゚听「話が脱線してるわよ」

 

( ;;)「ぴぎい」

 

ξ゚听「お茶飲んで落ち着きなさい」

 

 モララーは椅子に座り直し、テーブルの上、皿に盛られた大福をかじった。

 甘みが口一杯に広がった頃合いに煎茶を飲む。

 

 

543 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:13:35 ID:669DfIxQ0

キューさんいいね

 

 

544 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:14:25 ID:XaWEGaeMO

 

(*・∀・)「わーい、こしあんだー」

 

( ^ω^)「……とりあえずモララーは無視して話進めるお」

 

( ;;

 

( ^ω^)「タイトルも判明しているわけだけど……ニュッ君、あれはどんな話だお?」

 

( ^ν^)「舞台は江戸時代で、主人公は……ええと、浪人。

       空腹のあまり行き倒れたところを、呉服屋に拾われる。

       人は死なない。ただし刀で斬り合うシーンはある」

 

ζ(゚、゚「刀……

 

( ^ν^)「だが、デレの話通りなら『主人公』は刀の代わりに菜箸を使ったらしいから、

       刃物とか危険な物さえ持たなきゃ怪我人は出ないだろ。

       せいぜい打撲あたりじゃねえか」

 

( ^ω^)「刀の代用品なら、包丁を選びそうなもんだけど……。

       何で菜箸だったんだお」

 

ξ゚听「モララーは不要な殺生や乱暴なことは好まないわ。

      本もそれに似たのかしら」

 

( ^ν^)「あの本、そういや珍しくちゃんばらものだな。

       こいつが書くのなんて、町人の呑気な生活ぶりだの何だの平和な話ばっかなのに」

 

( ・∀・)「だって、アクション要素入れた方がニュッ君楽しんでくれるかなって……」

 

 

545 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:15:16 ID:XaWEGaeMO

 

( ^ω^)「それは置いといて。ニュッ君、展開の詳細を」

 

( ^ν^)「ん。あれは、3つの事件があって――」

 

 

 

*****

 

 

 

( ゚)「この間、館長が美味いチョコレートを買ってきたんだ」

 

o*゚ー゚)o「ふうん」

 

 2階、食堂。

 キュートの目の前、テーブルの上には、ミルクティーとチョコレートがあった。

 

 向かいにはクックル。

 和やかな雰囲気が流れている。

 

 

546 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:16:41 ID:XaWEGaeMO

 

 キュートからすれば申し分ない状況――なんてこともなく。

 

 

ハハ -)ハ「アーモンドのヤツとって、アーモンド」

 

( ゚)「はいはい」

 

川д川「ホワイトチョコどれ……?」

 

( ゚)「水色の包み」

 

o* )o(な・ん・で、この人達もいるのよぉおおお……!!)

 

 

 どういうわけか、ハローと貞子も同席していた。

 

 膝の上に乗せたキュートの拳が震える。

 

 

547 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:18:20 ID:XaWEGaeMO

 

川д川「……邪魔なら邪魔って言ってねえ……?」

 

ハハ -)ハ「ン? ワタシ達、いない方がイイ?」

 

o;*゚ー゚)o「え!? べっ……つに、邪魔なんて思ってませんけど!!」

 

ハハ -)ハ「ゴメンナサイ、ワタシ、誰かの近くにいる方が執筆捗るノ」

 

 ならクックル以外の人間を選べ――と、キュートは胸の内でこぼした。

 決して声には出せない。

 

 何故か横向きに座りながら隣のクックルに背を預けているハローに、

 「その姿勢をとる必要はあるのか?」とも、問うことは出来ない。

 

ハハ -)ハ「クックルあったかーい」

 

o* )o ギリッ

 

川д川「……その可愛い唇噛み締めちゃ駄目よ……。

    ハローは人懐っこい子だから勘弁してあげてね……」

 

 両膝でノートを支えながらペンを走らせるハロー。

 別に、キュートへ嫌がらせをしようなどとは思っていない。

 

 

548 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:19:27 ID:XaWEGaeMO

 

( ゚)「どうかしたのか?」

 

o#д)o「うるさいボケェ! おかわり寄越せーい!!」

 

(;゚)「何なんだお前」

 

 ミルクティーを一気飲みし、キュートがクックルにティーカップを突きつける。

 クックルは首を傾げつつそれを受け取り、ハローを一旦どかせてから腰を上げた。

 

 余談ではあるが、このときキュートは舌に軽い火傷を負った。

 

 

 

川д川「……不毛よねえ……」

 

o*゚ー゚)o「はい?」

 

 クックルが厨房に消えた直後、貞子が口を開いた。

 ホワイトチョコレートの包みを開けながら、隣、キュートを見る。

 

 

549 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:20:56 ID:XaWEGaeMO

 

川д川「クックルなんか諦めた方がいいわよ……」

 

ハハ -)ハ「アラヤダ、そういうコト? ゴメンナサイ、べたべたシテ」

 

o;*゚ー゚)o「ど、どうぞ遠慮なく! 存分にべたべたすればいいと思いますよ!!」

 

川д川「……万が一、あの鈍いクックルがあなたの気持ちを理解したとして……。

    そしてさらに万が一、両想いだったとして……」

 

o;*゚ー゚)o「いや、ですから――

 

川д川「……あなたが泣くだけよ……?」

 

o;゚ー゚)o――……

 

 好きじゃない、と否定しようとしたキュートの言葉は、

 ぞっとするほど冷たい貞子の声に引っ込まされた。

 

o;゚ー゚)o……ど、どういうことですか……?」

 

 キュートの問いに、貞子は答えない。

 

川д川「詳しく説明する気はないけど……忠告だけは、しておいたわよ……」

 

 

 

*****

 

 

550 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:22:34 ID:XaWEGaeMO

 

 

 __

( ,_` )「それじゃあ、これからよろしく」

 

( д )「はい、よろしくお願いします」

 

 取引相手――渋澤という名前の男――に見送られ、

 ミルナはビルを出た。

 外は薄暗い。

 

 今日の仕事は、挨拶と打ち合わせ、それと簡単な話し合いのみだったため

 早めの帰宅を許された。

 明日からはもっと遅くなるだろう。

 

 しかし、それにしても。

 

(;д )(印象最悪ぅうううう!!)

 

 早速やらかしてしまった。

 

 まず第一に遅刻。

 

 慣れない土地、加えて本来予定にはなかった長岡家からの出勤とはいえ、

 デレ達に道順や行き方を教えてもらっていたのに。

 

 遅れたのは10分程。どんな理由があるにせよ社会人として許されない過ちである。

 挨拶のほとんどは謝罪に終始してしまった。

 

 

551 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:23:46 ID:XaWEGaeMO

 

(;д )(おうち帰りたい。トイレに引きこもりたい)

 

 第二に、やはりと言うか何と言うか、この目。

 

 ミルナは本気で反省していたのだが、相手には、そうは見えなかったらしい。

 睨みながら謝っているようなものだから、不貞腐れた風に映ったのかもしれない。

 

 遅刻の件が許された後に各関係者へ挨拶に回った際も、

 目つきの悪さで多少の不快感を与えてしまったようだ。

 

(;д )(いっそ、このまま遠くへ行きたい。消え去りたい)

 

 第三。元来の不器用さ、コミュニケーション力の低さによる失敗。

 

 打ち合わせは、とてもスムーズとは言えない出来だった。

 説明は下手だし気は回らない。向こうのフォローに頼りっぱなし。

 最悪だ。

 

 

552 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:24:45 ID:XaWEGaeMO

 

( д )……はあ」

 

 ――そもそも。

 

 ミルナは初めから、こういったことには向いていない。

 本人は元より、彼の上司や同僚、後輩までもが理解している。

 

 理解しているからこその、今回の出張である。

 

( д )(こんなに嫌われてるなら、辞めた方がいいのかなあ)

 

 言ってしまえば、上司の嫌がらせだ。

 

 ミルナが自ら希望したかのように装って、取引に出向かせる。

 そうしてミルナが失敗した暁には、その責任を全てミルナに被せるつもりなのだ。

 直接言われてはいないが、そんなところだろうとの予測はつく。

 

 可哀相に、と同僚達が小声で話しているのを聞いた。

 行ってこい、とにやにや笑う上司の顔も見た。

 

 何故、目つきが悪いだけでこんな思いをしなければいけないのか。

 理不尽極まりない。

 

 

553 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:25:36 ID:XaWEGaeMO

 

    「――ミルナ君」

 

( д )「え?」

  _

( ゚)「ああ、やっぱり。ミルナ君だ」

 

('`*川「お帰りですか?」

 

 突然かけられた声に振り向くと、買い物袋を提げた長岡夫妻がいた。

  _

( ゚)「まだ仕事はある?」

 

( д )「あ、いえ……今日はもう終わりです」

  _

( ゚)「そうか、なら一緒に帰ろう。

     夕飯の材料を買ってきたところだ」

 

('`*川「折角だから、そこの大きなお店で買って来ちゃいました。

     今日は青椒肉絲ですよ。あと、大根と油揚げのお味噌汁、

     生野菜のサラダ、イカと里芋の煮物。……あ、嫌いなのあります?」

 

( д )「いえ。基本的に何でも食べます」

 

('`*川「そう? 良かった」

 

 

554 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:27:05 ID:XaWEGaeMO

  _

( ゚)「ペニサスさんのご飯は美味しいから、ミルナ君も楽しみにしておくといい」

 

('`*川「やあだ、ジョルジュさんったら。

     それでミルナさんのお口に合わなかったら恥ずかしいですよ」

  _

( ゚)「大丈夫だって、本当に美味しいんだから」

 

('`*川「もう」

 

 2人が、くすくす笑い合う。

 それを眺めながら、ミルナは、この夫婦の仲の良さを羨ましく思った。

 

 さあ帰ろう、とジョルジュが促し、歩き出す。

 自然と、並んで歩く長岡夫妻の少し後ろをミルナが追う形になった。

  _

( ゚)「ああ、バスに乗るけどいいか?」

 

( д )「はい」

  _

( ゚)「すぐそこだ」

 

 すぐそこ、というジョルジュの言葉通り、1分も経たぬ内にバス停に着いた。

 学生やサラリーマンと共にバスを待つ。

 

 

555 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:30:04 ID:XaWEGaeMO

  _

( ゚)「ペニサスさん。荷物、俺が持つよ。重いだろ」

 

('`*川「いいですよ、ジョルジュさんもう両手塞がってるじゃないですか」

  _

( ゚)「平気平気、もう一つぐらい持てる」

 

( д )――あ、あの」

  _

( ゚)「うん?」

 

( д )……俺が、ええと、持ちま、しょうか」

 

('`*川「お客様にそんなこと……

  _

( ゚)「まあまあ、親切は素直に受け取ろう」

 

( д )「お世話になってますから、お礼……ってほどのことでもないですけど」

 

('`*川「……んんー。じゃあ、ごめんなさい、お願いします」

 

 ペニサスが申し訳なさそうに差し出した袋をミルナは受け取った。

 その直後、バスがやって来る。

 

 帰宅する者の多い時間帯だからてっきり混んでいるだろうと思ったが、

 ミルナ達が座っても二つ三つ空席が見られる程度には空いていた。

 

 長岡夫妻が2人掛けのシートに座り、その後ろにミルナが1人。

 

 扉が閉まり、バスは緩やかに出発した。

 

 

556 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:32:15 ID:XaWEGaeMO

 

( д )……

 

 ぼうっと窓の外を眺める。

 

 見知らぬ町並みが過ぎ去っていく。

 シートの匂い、時折がたりと揺れる車体、囁き合う乗客の声。

 独特の空気に、ミルナの瞼が重くなる。

 

 眠りはしない。目を閉じるだけ――

 

 

 

 ――小さな爆発に似た音。大勢の悲鳴。

 

 

 

 ミルナは、はっとして顔を前方に向けた。

 

 

557 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:33:42 ID:XaWEGaeMO

 

 

(#=ω)ノ「動くんじゃねえょぅ!!」

 

 

(;д )……銃!?)

 

 運転席の隣に、小柄な男が立っていた。

 両手に拳銃を持ち、左手は運転手へ、右手は乗客に向けている。

 

 硝煙の臭いが鼻をついた。

 怪我人が出た様子はない。威嚇のために、床かどこかを撃ったのだろう。

 

 あちこちで悲鳴が上がっていたが、男が「うるさい」と一喝すると、

 水を打ったように静まり返った。

 

(#=ω)ノ「バスを停めるなょぅ。変な素振り見せたら撃つ」

 

 男の脅しに、運転手は何度も頷いた。

 それからしばし、車内は沈黙に包まれる。

 

 

558 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:35:33 ID:XaWEGaeMO

 

 赤信号を幾度か越えて。

 静寂を破ったのは、ミルナの目の前に座るペニサスだった。

 

('`*川「……どうしたいんです?」

 _

(;゚)「ペニサスさ……っ!」

 

(#=ω)ノ「ああ!?」

 

 空気が張り詰める。

 誰もが、信じられぬ思いでペニサスの方を見た。

 

('`*川「お金が欲しいんですか? でしたら私のお財布をあげますから、

     そんな危ないもの捨ててくださいな」

 _

(;゚)「ペニサスさんってば! しいっ、しーっ! 静かに!」

 

('`*川「だってジョルジュさん……

 

(#=ω)ノ「金なんかいらねえょぅ!!」

 _

(;゚)「!」

 

 ペニサスへ銃口を向け、男が叫んだ。

 ジョルジュがペニサスの頭を抱え込む。

 

 

559 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:37:33 ID:XaWEGaeMO

 

(#=ω)ノ「僕は、もう、どうしようもないんだょぅ! 逃げ続けるのが嫌になったんだょぅ!

      だから死んでやる……お前ら道連れにして、死んでやるんだょぅ!!」

 

 

( д )――

 

 

 ミルナの体が、急に軽くなった。

 すう、と頭が冷え渡る。

 

 右手が勝手に何かを掴んだ。

 

 

(#=ω)ノ「つっても弾は限りがあるからょぅ……誰を殺すかじっくり吟味――

 

 

    「呆れたわ、臆病者め」

 

 

(#=ω)ノ「……んだょぅ?」

 

 

560 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:39:05 ID:XaWEGaeMO

 

( д )「お主の勝手に、何故俺らが付き合わねばならぬ」

 

 ゆらり、ミルナが立ち上がる。

 睨みつける瞳に、男は怯んだ。

 

( д )「お主に何があったかは知らぬ、知る気もない。

     だが、どんな事情であれ、見ず知らずの他人を巻き込む道理などなかろうよ」

 

 銃が自分に向けられていることなど意にも介さず、

 ミルナは正面から男へ歩み寄っていった。

 

 まさか堂々と近付いてこられるとは思っていなかったのか、

 男は狼狽えるばかりだ。

 

(;=ω)ノ「てめえ――と、止まれ!」

 

( д )「言われて素直に止まるとでも?」

 

(;=ω)ノ「撃つょぅ!!」

 

(#д )「やるならやれ!!」

 

 引き金にかかった男の指。

 動く気配は、ない。

 

 

561 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:43:07 ID:XaWEGaeMO

 

(#д )……ああ、ああ、そうだろう、やれないだろう!

     一人で冥土を渡る度胸もない奴が、人を簡単に殺せるとでも!?」

 

(#= ω )ノ「う、うう…………うあああああああっ!!」

 

 怒りと恐怖、全身に浸透する不安。

 それらが、ようやく男の指に力を込めさせた。

 

 だが――遅かった。

 

 

(#д )「今更覚悟を決めたか、のろま!!」

 

 

 ミルナは、

 

 右手に握りしめた大根で、男を殴り抜いた。

 

 

.

 

 

562 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:44:36 ID:XaWEGaeMO

 

(;= ω)ノ「あぎっ――

 

 下顎に衝撃。

 よろけた男の頭が、ステップ付近の手摺りにぶつかった。

 鈍い音が響く。ぐるりと白目を剥いて、男は昏倒した。

 

( д )「ふん。阿呆が」

 

 大根は真っ二つだ。

 どれだけの勢いでぶん殴ったのやら。

 

 数秒の間があく。

 我に返った運転手がブレーキを踏み、数人の乗客が気絶した男を取り押さえた。

 

 

563 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:46:41 ID:XaWEGaeMO

 

( д )

 

(;д )「!?」

 

 ミルナは正気を取り戻す。

 

 柳色の本。浪人の話。

 思いを寄せた女と勝手に無理心中しようとした男を、浪人が止めるのだ。

 

 多少の差異はあれ、ほとんど同じだ。

 

(;д )「ま、また……まただ……

 

 ミルナは、左手で運転手の肩を掴んだ。

 必死の形相に、運転手は「ひい」と小さな悲鳴を上げた。

 

(;д )「開けろ! 降ろしてくれ!!」

 

 運転手が顔を引き攣らせながら入口を開く。

 大根を放り、ミルナは踵を返した。

 

('`*川「ミルナさーん?」

  _

(;゚)「ありゃ」

 

 止めようとする乗客を振りほどき、バスを飛び降りる。

 

 幸い、朝、バス停へ向かうときに通った道だ。

 ミルナは歯を食いしばって、長岡家へと全力で走った。

 

 

564 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:48:39 ID:XaWEGaeMO

 

 

 長岡家、玄関。

 インターホンを連打する。

 はい、と返事をし、デレがドアを開けてくれた。

 

ζ(゚ー゚「あ、ミルナさん。おかえりなさ……

 

(;д )「デレちゃん!!」

 

ζ(゚ー゚「は、はいっ?」

 

(;д )「訊いたのか!? あの本のこと! 誰にかは知らないけど訊いたのか!?」

 

ζ(゚、゚「はうっ」

 

 デレの両腕を掴み、詰め寄った。

 もう少し近付いたら頭がぶつかりそうだ。

 

(;д )「またあの本と同じことが起きた!

     これは一体何なんだ!?」

 

ζ(゚、゚……ええっと、2つ目……無理心中の話でしたっけ?」

 

(;д )「そうだよ、それだ! ……呪われでもしてるのか? 偶然なのか!?」

 

 

565 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:50:10 ID:XaWEGaeMO

 

ζ(゚、゚「だ、大丈夫です、残る話……事件は一つだけでしょう?」

 

(;д )……まだ全部読んでないから分からない」

 

ζ(゚、゚「一つだけなんです。多分、明日、起こると思います。

      モララーさんの本は見所だけ手早く演じさせたがる傾向があるらしいので」

 

(;д )「モララー? あれの作者?」

 

ζ(゚、゚……あ、いえ、気にしないでください!

      とにかく明日、演じ……ええと、本と同じことが起きたら、

      それで終わりです。解放されますよ」

 

(;д )「明日…………絶対にやらなきゃ駄目なのか?」

 

ζ(゚、゚「やらなきゃ駄目っていうか、やらされるっていうか」

 

(;д )――俺が他人の目にどう映ると思う!?

     いきなり口調がおかしくなって、菜箸や大根振り回すんだぞ!

     もし、もしも取引先の前でそんなことになったらおしまいだ!!」

 

ζ(゚、゚……一応、何とかする方法もあるにはあるんです、けど。

      でも多分無理です」

 

(;д )「やってみなきゃ分からないだろ?」

 

 

566 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:51:32 ID:XaWEGaeMO

 

ζ(--;ζ「ええと……じゃあ、本を出してください」

 

(;д )「リビングのテーブルに上げてる」

 

ζ(゚、゚「私、ついさっき帰ってきたところですけど、リビングにはありませんでしたよ」

 

(;д )「え?」

 

 デレから手を離し、ミルナは慌てて家の中に入った。

 お邪魔します、とおざなりに挨拶。

 

 一目散にリビングへ飛び込んだ。

 テーブル、椅子、棚、ミルナの布団、鞄。

 至る所を調べたが、本は影も形もない。

 

(;д )「何で!?」

 

ζ(--;ζ……

 

 

567 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:53:04 ID:XaWEGaeMO

 

 

 ――「キュートちゃんのときみたいに、ミルナさんと私で演じたら終わらせられますか」、と。

 図書館でデレが訊ねた際、ニュッは首を横に振った。

 

( ^ν^)『モララーの本は、一度決めたキャスティングは変えたがらないんだ』

 

ζ(゚、゚『?』

 

( ^ν^)『お前は、「呉服屋の娘役」で固定された。

       それ以外の役を演じようとしたって無理』

 

ζ(゚、゚『じゃ、じゃあ、ニュッさん達で……って、あ、そっか……

 

( ^ν^)『多分、2つ目の事件はそろそろ起きるだろうから間に合わない。

       3つ目の事件は、既出の盗っ人達が中心の話だから俺らの入る余地がない』

 

ξ゚听『念のため、帰ったら試してみなさい。

      きっと、本はどこかに隠れて出てこなくなるだろうけれど』

 

 

 ツンの言った通り、どうやら本は隠れてしまったらしい。

 デレは、尚も本を探すミルナの手を引っ張った。

 

 

568 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:54:56 ID:XaWEGaeMO

 

ζ(゚、゚……ミルナさん、明日だけ……頑張ってくれませんか」

 

(;д )……

 

 ――ミルナには何も分からない。

 デレは何か知っている。

 

 なら、デレの言う通りにするしかないではないか。

 

(;-д- )……分かった」

 

 それに、人目のないところでひっそりと終わらせられる可能性だってある。

 そうなることを期待しよう。

 

(;д )……だとしても死ぬほど恥ずかしいけど)

 

 

 

*****

 

 

569 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:56:24 ID:XaWEGaeMO

 

 その頃。あるデパートの駐車場。

 車の中で、シラネーヨ達がミルナへの仕返しについて話し合っている。

 

 尾行はミルナが長岡夫妻と共にバスへ乗った辺りでやめた。

 どうせ帰宅するだけだろう、と。

 

( ´ー`)「勤め先は分かったな」

 

`ハ´)「で、どうするアル?」

 

( ´ー`)「明日、帰るところを襲撃するヨ。

      出来れば、バスに乗る前にやった方がいいか」

 

`ハ´)「人目につくアルヨ」

 

( ´ー`)「仕返しっつったって、数発殴れりゃいいんだヨ。

      さっと殴って、さっと逃げる。上手くいきゃ警察のお世話にゃなんネーヨ」

 

 

570 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 22:59:12 ID:XaWEGaeMO

 

(*)……シラネーヨってこんな野蛮だったっけ」ヒソヒソ

 

`ハ´)「ここまでキレたところは見たことないけど、前々から怒ると恐かったアル」ヒソヒソ

 

(*)「それにしたってさあ……」ヒソヒソ

 

( ´ー`)「んだヨ?」

 

(*)「別に。……予定外なことが起きたらどうする?」

 

( ´ー`)「臨機応変で」

 

(*)「すっかすかな計画だな!」

 

( ´ー`)……しっかし、あいつら通報しネーのかヨ? 警察とかが動いてる気配はネーが」

 

 ラジオをかけ、ニュースが流れているチャンネルを探す。

 シナーの肩に顎を乗せ、つーもラジオに耳を傾けた。

 だが、彼らの犯行に関する情報は一つもない。

 

(*)「何も盗ってないからかね?」

 

`ハ´)「通報されないに越したことはないアル」

 

( ´ー`)「ないアルってややこしいんだヨお前はいつもヨー」

 

『――バスの中で発砲――伊予ぃょぅ――強盗犯――余罪――』

 

(*)「んー? バスジャックだって」

 

 

571 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:00:55 ID:XaWEGaeMO

 

 ふと、読み上げられたニュースにつーが興味を示した。

 犯人にはかなりの余罪があるらしく、警察から逃げるのに疲れた彼は、

 他人を道連れにして死ぬつもりだったそうだ。

 

(*)……やっぱ警察から逃げるの、大変なんだなあ」

 

『男――サラリーマン――乗客によると、大根で犯人を――名乗らずに現場を離れ――』

 

(*)……

 

( ´ー`)……

 

`ハ´)「バスに乗ってたサラリーマンが大根で犯人を殴った、アルか」

 

(*)……バス……

 

( ´ー`)「いやいやいや、まさか、んなわけネーヨ」

 

 シラネーヨは否定したが――脳裏を過ぎったのは、たしかにミルナだった。

 

(*)「銃持った相手に……大根で……

 

(´ー`)「うるせえうるせえ」

 

(*)「マジであのおっさんだったら……勝ち目ないって、シラネーヨ」

 

(´ー`)「あーあー聞こえなーい」

 

*****

 

 

572 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:02:12 ID:XaWEGaeMO

 

 

('`*川「格好よかったんですよ。お説教して、大根でばちーんって」

  _

( ゚)「『お主』とか言ってたな」

 

(;//д///)

 

ζ(゚ー゚「へ、へえ……

 

 夜。長岡家、リビング。

 食事をしながら、ペニサスとジョルジュはミルナの勇姿をデレに語った。

 

 ミルナは真っ赤になって俯き、ひたすら箸を動かしている。

 

('`*川「でも、どうして逃げちゃったんです? お手柄だったのに」

  _

( ゚)「まあ、名乗らない英雄ってのもオツなもんだ」

 

(;//д///)

 

ζ(゚ー゚……ミルナさん、悪いことしたんじゃないんだから、堂々としていいんですよ」

 

('`*川「そうです、恥ずかしいことなんて何もありません」

  _

( ゚)「優しくて強くて謙虚。いいね、ヒーローらしい!」

 

 ちなみに、あの後何人もの乗客に踏まれた大根は粉々になってしまい、

 味噌汁の具は油揚げとキャベツ――サラダ用に買ったもの――に変更された。

 

 

573 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:04:13 ID:XaWEGaeMO

 

(;д*)「も、もうやめてください、その話」

 

('`*川「どうして? 本当に格好よかったのに」

 

(;д*)「だっ……だから、そんな――

 

 顔を上げたミルナ。

 恥ずかしさのあまり、目元に力が入ってしまった。

 慌ててそっぽを向いたが、ペニサスはにこにこ笑っている。

 

(;д )「すみません」

 

('`*川「え?」

 

(;д )「に、睨んだわけじゃないんです、ちょっと力んで……

 

('`*川「?」

 

(;д )……今、恐い顔したでしょう、俺。いやいつも恐いって言われますけど、あの」

 

('`*川「えっ、ミルナさんの顔、恐いですか?」

  _

( ゚)「いいや。きりっとしてると思うけど」

 

(;д )――はあ?」

 

 拍子抜けしたミルナが、ジョルジュとペニサスを見る。

 嘘をつく様子もなく、2人は首を傾げていた。

 

 

574 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:05:43 ID:XaWEGaeMO

 

(;д )……よく、言われるんです。ぎょろぎょろして恐いって」

 

('`*川「大きな目で羨ましいですけどねえ……私なんか、ほら、細目で。

     起きてるのに、『寝てるの?』なんて言われちゃって、もう」

  _

( ゚)「ペニサスさんはそこがいいんだ。

     ――ううん、ミルナ君は綺麗な目してると思うけど。

     なあ、デレ」

 

ζ(゚ー゚「え!?」

 

ζ(゚ー゚……う、うん、そうだね」

 

( д )……恐いなら恐いって言っていいよ」

 

ζ(--;ζ「ごめんなさい、人生経験が浅いもので」

 

 しかし、それにしてもこんなことを言われたのは何年ぶりだろう。

 

 親や身内からは気遣われてきたが、

 赤の他人、それも昨日知り合ったばかりの人間に顔を褒められたのは初めてだ。

 その上、「羨ましい」などと。

 

 

575 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:06:24 ID:XaWEGaeMO

 

( д )……

 

 何とまあ、そんな風に思ってくれる人もいたものだ。

 

 少し、ほんの少しだけ。

 コンプレックスが和らいだ、気がした。

 

 

('`*川「ああ、窓、直してもらいましたからね」

 

ζ(゚ー゚「うん、見た見た」

  _

( ゚)「窓といえばミルナ君、本当にありがとう。

     やっぱり泥棒にも侍っぽい説教とかした?」

 

(;д*)「うぐおおお……!!」

 

 

 

*****

 

 

576 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:08:04 ID:XaWEGaeMO

 

 

 翌朝。火曜日。

 ミルナは、寝不足でぼうっとした頭のまま起き上がった。

 布団を畳み、寝間着を脱ぐ。

 

 スーツを着込んでネクタイを締めたとき、丁度デレがリビングにやって来た。

 

ζ(ぅ、-*ζ「おはようございます……

 

( д )「おはよう。デレちゃんは休みだっけ」

 

ζ(-、゚「はい……

 

 世は祝日である。勤労感謝の日。

 そんなのお構いなしに、今日もミルナは出勤しなければならない。

 

ζ(゚、゚「もう行くんですか?」

 

( д )「昨日遅刻しちゃったからね。早めに行こうかなと」

 

ζ(゚、゚「ありゃ……頑張ってくださいね」

 

( д )「どっちを?」

 

ζ(゚、゚……お仕事も、『本』のことも」

 

 

577 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:08:58 ID:XaWEGaeMO

 

 本は、結局見付からなかった。

 「盗っ人」が仕返しに来るのはデレから教わったが、

 どんなタイミングで、どこに現れるかは予測がつかない。

 

 昨日のバスでの事件も、本に書かれた時間帯や状況は違っていたし。

 

 ミルナが寝不足になった原因は、それら不安によるものである。

 

( д )「本当に、今日の内に終わるんだね?」

 

ζ(゚、゚「絶対とは言い切れませんが、可能性は高いです」

 

( д )「そう。――じゃあ、行ってきます」

 

ζ(゚、゚「行ってらっしゃい……あの、ミルナさん!」

 

( д )「ん?」

 

ζ(゚、゚「危ないもの、持ったら駄目ですよ。刃物とか……尖ったのとか」

 

( д )「ああ、善処するよ」

 

 ひらひら手を振って、ミルナはコートと鞄を拾い上げた。

 コートを羽織り、左手に鞄を提げる。

 

 ぐう、と腹が小さく鳴った。

 朝食をとる時間はない。

 早足になりながら、長岡家を後にした。

 

 

578 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:10:58 ID:XaWEGaeMO

 

 

 寝不足。空腹。本のことばかりが気になる。

 

 そんな状態で満足に仕事をこなせるだろうか。

 少なくとも、ミルナには難しかった。

 __

( ,_` )――河内君」

 

( д )……

 __

( ,_` )「河内君」

 

(;д )「えっ! あ、はい!」

 __

( ,_` )……話聞いてたかい」

 

(;д )「あっ、ええと、イベントの概要――

 __

( ,_` )「それはもう済んだ」

 

(;д )「はい! ですね! ……よ、予算のことでしたね」

 __

( ,_` )「ああ。……大丈夫か、君」

 

 会議室に、何人かが溜め息をつく音が広がった。

 書類をめくるミルナの手から、力が抜けそうになる。

 謝りたいが、謝ったら、さらに空気が悪くなりそうな気がした。

 

*****

 

 

579 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:12:42 ID:XaWEGaeMO

 

 

 

 夜。

 

(; д )(死のう)

 

 ふらふら、会社を出ながらミルナは本気でそう思った。

 自分がこんなに仕事の出来ない奴だったとは。

 

 いっそ取引を辞退して、向こうの会社に戻って辞表でも出してしまおうか。

 

(; д )(これ以上『もう来なくていいよ』的な視線は浴びたくない……

 

 ミルナは眼力が異様に強い割に、メンタルが物凄く弱い。

 そうして気後れする度、また失敗を重ねてしまう。

 もう限界だ。

 

    「――河内君」

 

(;д )「へあ?」

 __

( ,_` )「待った待った」

 

 振り返ると、渋澤が片手を挙げながらビルを出てくるところだった。

 ミルナの前で渋澤は立ち止まる。

 

 

580 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:14:02 ID:XaWEGaeMO

 

(;д )「渋澤部長」

 __

( ,_` )「今から時間はあるかい」

 

( д )「今からですか?」

 

 現在、午後7時半ほど。

 これといった予定はないが、居候させてもらっている手前、

 帰宅時間が遅くなりすぎるのはまずい。

 

( д )「あるにはありますが……どうしました? 会議で何か足りないことが――

 __

( ,_` )「ああいやいや。仕事じゃないし、長いこと拘束するつもりもない。

     何、ちょいと飯でも一緒にどうかと」

 

(;д )「食事ですか」

 __

( ,_` )「つっても居酒屋なんだが。……嫌なら嫌で構わん」

 

(;д )「いえ! 是非お願いします!」

 __

( ,_` )「うん、そうか。なら行こう。タクシーを呼んである」

 

 

581 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:15:25 ID:XaWEGaeMO

 

 

 

 ミルナと渋澤から数メートル離れた場所に停まっている車が一台。

 言わずもがな、盗っ人3人組。

 

(*)「あのおっちゃんは上司かな?」

 

`ハ´)「多分そうアル」

 

( ´ー`)「とりあえず追うヨ」

 

(*)「あ、タクシー乗ったタクシー!」

 

(´ー`)「んなっ……おいおい、頼むからそのまま帰んないでくれヨ!」

 

 そろそろ。

 結末を迎えようとしている。

 

 

 

*****

 

 

582 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:16:00 ID:XaWEGaeMO

 

('`*川「明日の朝、新幹線で帰ります」

 

ζ(゚、゚「朝?」

 

('`*川「時間としては10時くらい……デレさんが学校にいる頃ですね」

  _

( ゚)「今回はあんまり一緒にいられなかったなあ」

 

 長岡家。

 長岡一家はリビングで夕食をとっていた。

 ミルナからは先程、外食して帰るとの連絡があった。

 

 ちなみに。

 

( ^ω^)「あ、お呼びいただいたら駅まで乗せていきますお?」

 

('`*川「あらあらそんな、悪いです」

 

(*^ω^)「まったく! まあったく、悪くなんかありませんお!」

 

ξ゚听「ん。うどん美味しい」

 

(*・∀・)「具沢山なうどん久々に食べたなあ」

 

 内藤、ツン、モララーも食卓を囲んでいる。

 

 夕方頃、彼らは本の回収を目的に長岡家を訪れた。

 ミルナが演じ終わるのを待つためだったのだが、

 あれよあれよという間に夕食の御相伴にあずかることとなったのであった。

 

 

583 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:18:01 ID:XaWEGaeMO

 

('`*川「お口に合いました? 麺を手打ちした甲斐がありましたわ」

 

( ^ω^)「結婚してください」

 

ξ゚听≡≡⊃)))ω゚)「ニンゲンイスッ!!」

 

(*・∀・)「わーい、ちくわの天ぷらが入ってる」

  _

( ゚)「いやあ……しっかし格好いいねえ、モララー君。俳優さんみたいだ。

     着物も似合ってるし」

 

(*・∀・)「いやいやそれほどでもないですお義父さん」

  _

( ゚)

  _

( ゚)「おとう……さん……?」

 

ζ(゚、゚「な、何か今ニュアンスが違……

 

( ・∀・)「え? だってさ、婿入り前の体……それも一糸纏わぬ裸体を見られたからには

      デレちゃんの婿になるしかないって貞子が」

  _

( ゚)

 

('`*川「あらあらまあまあ」

 

 

584 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:20:32 ID:XaWEGaeMO

 

( ^ω^)「それ貞子にからかわれただけだお」

 

(;・∀・)「えっ、そうなの? 俺は婿入りする気満々だったよ?」

 

ξ゚听「そもそもそんな理由で結婚するつもりだったの?」

 

(*・∀・)「別にデレちゃんなら悪くはないかなと思っている」

  _

( ゚)

 

:ζ( ;ζ:……それ以上……それ以上喋るな……っ!!」

  _

( ゚)「デレ……ちょっとお父さんとお話しようか……

 

ζ(゚、゚「違うんですううううううううう!

      鳥の糞がお風呂場で全裸ハプニングだったんですううううううう!!」

 

('`*川「ごめんなさいデレさん、ちょっと何言ってるか分からないです」

 

ξ゚听……デレとモララーが結婚なんて、ニュッ君が可哀相ね」

  _

(#゚)「デレェエエエエエエ!!

     父さん達が目を離した隙にどんな乱れた人間関係築いたんだお前ぇええええ!!」

 

ζ(゚、゚「ツ、ツンちゃん何なの!?

      このタイミングにその発言は悪意しか感じられないよ!?

      ツンちゃんが言うと真実味がありありなんだからその辺自覚してね!?」

 

*****

 

 

585 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:21:28 ID:XaWEGaeMO

 

 

 

 歓楽街の一角。

 ミルナは、居酒屋に連れてこられた。

 店舗は大きく、店内は騒がしい。

 

 騒がしいと言っても、奥の座敷へ案内されると、喧騒から少しだけ逃れられた。

 

 ミルナと渋澤は、向かい合う形でテーブルを挟んだ。

 胡座をかく渋澤に対し、ミルナは正座の体勢をとる。

 __

( ,_` )「そんな畏まらなくていいから。楽にしていいよ」

 

(;д )……は、はい」

 __

( ,_` )「ここはモツ鍋がオススメだ。下手に専門店で食うより安くて美味い」

 

 それでいいかと渋澤が問うので、何度も首を縦に振った。

 渋澤が店員を呼び付け、モツ鍋と、いくつかのツマミ、日本酒を注文する。

 

 メニュー表に記された値段を見る限り、

 どれも、その辺の居酒屋で提供されるよりよっぽど高い。

 

 ミルナは恐縮しっぱなしである。

 

 

586 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:22:33 ID:XaWEGaeMO

 

 少しして、注文通りの品が運ばれてきた。

 

 くつくつと煮えるモツ鍋。

 湯気と味噌の香りがミルナの食欲を刺激する。

 

 徳利からぐい呑みに酒を注ぎ、まずは乾杯。

 ぐい呑み同士が、こつんと音を立てた。

 

( д )「いただきます」

 __

( ,_` )「うん」

 

 ――鍋をつつきながら世間話などをして、時間は流れていった。

 緊張やら何やらで、ミルナは満足に味わえなかったのだが。

 

 

587 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:23:29 ID:XaWEGaeMO

 

 

 __

( ,_` )「君と、話し合ってみろと」

 

( д )「え?」

 __

( ,_` )「みんなに言われたよ」

 

 鍋や皿がほとんど空になった頃。

 

 独り言のように呟き、渋澤は酒を口に含んだ。

 ふ、と息をつく。

 __

( ,_` )「出だしから失敗続きだな、君は。2日目なのに評価は下がる一方だ」

 

(;д )「う」

 __

( ,_` )「正直、何故河内君が今回の取引に名乗り出たのか分からん」

 

(;д )「うう」

 __

( ,_` )「何を考えてるかさっぱりだ」

 

(;д )「ううう」

 __

( ,_` )……だから、理解を深めるために、一緒に酒を飲んでこいと言われた」

 

(;д )「ううう、う?」

 

 

588 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:25:16 ID:XaWEGaeMO

 __

( ,_` )「飯を食って、酒を飲んで、雑談して……

     これから商談を進めるに相応しい人間か判断してほしい、と。

     駄目そうなら別の人間を手配してもらうことになる」

 

(;д )……

 

 青ざめたミルナには目もくれず、渋澤は手元に視線を落としている。

 表情からは、渋澤の考えることが見えてこない。

 

 ミルナは無意味に箸を開閉し、かちかちと音をたてた。

 

 ――やっぱり、もうおしまいか。

 いくら何でも早過ぎるなと、ミルナは、いっそ可笑しささえ感じた。

 無能なんてこんなものだ。

 

 向こうの上司が笑う姿が目に浮かぶ。

 

 __

( ,_` )「だが、実際こうしてみると、普通だな」

 

( д )……普通?」

 __

( ,_` )「普通だ。リラックスしてるのか?」

 

( д )「物凄く緊張してます」

 

 渋澤が吐息だけで笑ったのが聞こえた。

 「そうか」、と笑い混じりの返事。

 

 

589 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:27:11 ID:XaWEGaeMO

 __

( ,_` )「それぐらい、普段からはっきりしてくれるといいんだが」

 

 はっきり出来たら苦労はしない。

 口ごもるミルナに、渋澤は徳利を差し出した。

 __

( ,_` )「まあ飲め」

 

( д )……ありがとうございます」

 __

( ,_` )「おう」

 

 とくとく、小気味良い音がミルナの耳を擽った。

 心は妙に落ち着いている。

 

 役に立たないからと追い返されたら、同僚達からどんな目を向けられるか。

 どんな言葉で上司に詰られるか。

 それを考えてみても、恐怖や不安は沸かなかった。

 

 ただ単に、諦めただけ。

 

 __

( ,_` )「美味いか?」

 

( -д- )「はい、とても」

 

 

 

*****

 

 

590 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:28:03 ID:XaWEGaeMO

 

 

 

 会計を済ませ――渋澤が奢ってくれた――、居酒屋を出た。

 

 酒のせいか体が温かい。

 コートは羽織らず、適当に畳んで腕に引っ掛けた。

 __

( ,_` )「向こうでタクシーが待っている。行こう」

 

( д )「はい……

 

 渋澤の後を歩きながら、そろそろ帰ります、と携帯電話でデレにメールを送る。

 

 送信を確認し、

 

( д )(ん?)

 

 はて、どうしてデレのメールアドレスを知っていたのだったかと、

 ミルナは首を傾げた。

 

( д )

 

(;д )「あ」

 

 アルコールで濁る頭に、「本」のことが蘇った。

 

 そうだ、たしか、仕返しに来た盗っ人達を返り討ちにしたら、

 すぐにデレへ知らせるようにと――

 

 

591 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:29:05 ID:XaWEGaeMO

 

 

     「――ようやく出てきたか、おっさんヨォ!!」

 

 

 後ろから聞こえた声。

 ミルナは立ち止まり、片手で額を押さえた。

 

(;д- )……

 

 振り返る。

 

(´ー`)「ったく、散々待たせやがって……!」

 

`ハ´)「すっかり体が冷えたアル」

 

(;*)「し、シラネーヨ、ここでやんの!?」

 

(´ー`)「これ以上待てっかヨ!」

 

 出た。

 「盗っ人」、3人組だ。

 

 

592 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:31:15 ID:XaWEGaeMO

 

 男2人、もといシラネーヨとシナーは鉄パイプを持って道の真ん中に立ち、

 つーは路上に置かれたスナックの看板の陰でしゃがみ、顔だけを覗かせている。

 __

( ,_` )「知り合いか?」

 

(;д )「ええと」

 

(;д )……知りません。帰りましょう」

 

(´ー`)「シラネーとは言わせネーヨこの野郎!!」

 

 何とか見て見ぬふりは出来ないものかと、ミルナは彼らに背を向けた。

 しかし、残念ながらシカトが通用する相手ではない。

 

 シラネーヨは怒鳴り、鉄パイプでアスファルトを叩いた。

 耳障りな音が響く。

 

 不穏な空気を察したか、いつの間にやら人々は少し離れたところで足を止め、

 ミルナ達の様子を窺っていた。

 

 喧嘩かと囁き合う声がする。

 

 

593 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:32:40 ID:XaWEGaeMO

 

(;д )……何なんだよ……

 

(´ー`)「ちょっとだけ殴らせろ」

 

(;д )「鉄パイプを使うのは『ちょっとだけ』に含まれるのか!?」

 

`ハ´)「素手じゃあ、まず勝てないアルし」

 

(*)「とにかくリーチがあった方がいいってシラネーヨが言ってた」

 __

( ,_` )「河内君、これはどういう状況だ?」

 

(;д )「あー、えー、……何でしょう、逆恨み?

     ――ていうか、お前! 俺は別にお前達を傷付けたわけじゃないだろ!?

     どうして仕返しなんか……」

 

(´ー`)「こちとら、よく分かんねえけど腹立って仕方ネーんだヨォオオオ!!」

 

(;*)「お前もよく分かってなかったんだ!?」

 

(;д )「うっわ!?」

 

 痺れを切らしたシラネーヨが、鉄パイプを振りかぶってミルナに駆け寄った。

 ミルナは咄嗟に屈み、振り下ろされた鉄パイプを避ける。

 ぎりぎりだ。

 

 勢いのまま、シラネーヨから距離をとるため地面を転がった。

 ミルナのコートと鞄が宙を舞う。

 

 

594 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:33:27 ID:XaWEGaeMO

 

`ハ´)「ストップ」

 

(;д )「!」

 

 だが、そこにシナーがいた。

 しゃがみ込む姿勢で停止したミルナの顎を、鉄パイプの先で持ち上げる。

 シナーを見上げながら、ミルナは焦燥に駆られた。

 

(;д )(早く、早くしてくれ……!)

 

 「浪人」に変わる気配がまったくない。

 スイッチが入らない。

 

 このままでいたら――どうなってしまうのだろう。

 

 なす術もなく、おとなしく殴られるなんて嫌だ。

 

 人前、まして渋澤の前であることなど関係ない。

 早く変われ、早く、早く。

 

 

595 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:35:12 ID:XaWEGaeMO

 

(´ー`)「おらっ!」

 __

(;,_` )「うおっ!?」

 

(;д )「!」

 

 シラネーヨが、渋澤の後ろから彼を捕まえるのが見えた。

 

 左手で渋澤の首元を抱え込み、右手の鉄パイプで再びアスファルトを鳴らす。

 

(´ー`)「ひ、人質とってやったヨ! あんたの上司だろ?

      こいつまで殴られたくなかったら、抵抗すんじゃネーヨ!」

 

 牽制しながら、シラネーヨは、自分自身の行動に怯えていた。

 

 おかしなことをしている自覚はある。

 泥棒に入った方が悪いのも、ミルナを怨む意味がないことも、理解はしている。

 事が、無駄に大きくなっていることも。

 

 なのに止まらない。怒りは膨れ続けていく。

 こんな言い方は陳腐に過ぎるが、まるで見えない何かに操られているようだ。

 

 

596 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:36:39 ID:XaWEGaeMO

 

(;д )「渋澤部長!」

 

`ハ´)「……抵抗するなと言ったアル」

 

(;д )……!」

 

 立ち上がろうとしたミルナの額を、鉄パイプで小突かれる。

 

 ミルナは横目で野次馬へ視線を送った。

 誰も、シラネーヨ達を止めたり警察を呼んだりする気はなさそうだ。

 

 薄情者、とミルナは心中で吐き捨てる。

 これも「本」の仕業だとは、彼が知る由もない。

 

 

597 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:38:13 ID:XaWEGaeMO

 

 

 そのとき――ふと、ある物が目に入った。

 

 瞬間。

 

 

( д )

 

( д )(あ)

 

 

 「来た」。

 

 

 焦りが急速に消えていく。

 鉄パイプごとシナーを弾き、身を起こした。

 

;`ハ´)「あわっ……!」

 

(;*)「シナー!」

 

 

598 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:40:08 ID:XaWEGaeMO

 

(´ー`)「あっ、くそっ、話聞いてたか!?」

 

( д )「おい、そこのお前!!」

 

 怒鳴るシラネーヨを無視し、ミルナは野次馬の先頭、

 1人の男のもとへ駆けた。

 

(;=д)「ら、ラギッ!?」

 

( д )「それ貸せ!!」

 

(;=д)「ちょっ……な、何――

 

 男が持っていたものを奪い取る。

 

 そして、鉄パイプを構え直したシナーへ、「それ」を向けた。

 

 

599 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:41:10 ID:XaWEGaeMO

 

(#д )――また会ったな盗っ人共!

     そんなに斬られたいのか!?」

 

 

 1メートルほどの持ち手、先端に横長のボード。

 ボードには文字が記されている。

 

 いわく、「美味、格安! 疲れた貴方の憩いの場・居酒屋びっぷ コチラ→」。

 

 要するに。

 

 

(´ー`)……プ」

 

 

(´ー`);`ハ´(;*)「プラカードだ――――――――――!!」

 

 

 客引き用のプラカードだった。

 

 

600 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:42:56 ID:XaWEGaeMO

 __

(;,_` )「おい、河内君?」

 

( д )「其の方。巻き込ませてしまって面目ない」

 __

(;,_` )「は?」

 

( д )「今、助けよう」

 

 言うが早いか、プラカードをシナーの首めがけて突き出した。

 ボードが喉を圧迫し、シナーの息が一瞬詰まる。

 

;`ハ´)「うぐ……!」

 

( д )「解せぬ」

 

 よろりと一歩下がったシナーが体勢を整えるよりも先。

 

 ミルナはさらに間を詰め、プラカードでシナーの脇腹を殴り抜く。

 

(;*)「わぎゃああ!」

 

 つーが隠れていた看板へとシナーが吹っ飛ばされた。

 凄まじい音がして、野次馬から悲鳴が漏れた。

 

 

601 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:44:24 ID:XaWEGaeMO

 

 衝撃で倒れる看板、下敷きになるつー、すっかり気を失ったシナー。

 

(;*)「んあー! おーもーいー!」

 

(#)ハ )キュー

 

( д )「まことに解せぬ。これほど弱いのに、何故俺に向かってきたのやら」

 

 呟き、プラカードを一振り。

 刀に付いた血を払うのに似ていた。

 

 ミルナは一拍おき、シラネーヨを睨みつける。

 

(´ー`)「っ……

 

 怯みかけたシラネーヨは、それを誤魔化すようにミルナを睨み返した。

 腕に力が篭る。渋澤が苦しげに眉を寄せた。

 

(´ー`)「こいつは人質だって言ったヨな!? てめえがそう出るならこっちだって、」

 

( д )……あまりにも情けない」

 

(´ー`)「ああ!?」

 

( д )「復讐に来る勇気は認める。

     しかし――それだけだ」

 

 

602 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:46:14 ID:XaWEGaeMO

 

(#д )……恥を知れ!!」

 

 ぎり、と軋むほどプラカードを握るミルナの手。

 震えているのは、恐怖からではなく、怒りからだ。

 

(#д )「丸腰の無力な町人を巻き込むとは何事だ!?

     悪人にも悪人なりの矜持があろう!

     此度の襲撃、俺を狙ってのものの筈。なれば尚更他人への手出しは許されぬ!」

 __

(;,_` )(´ー`)(町人……?)

 

(#д )「分かったか、分かったのならその手を離せ!

     切っ先の行方はどこだ? 俺だ! 俺に向けろ!

     俺のみがお主の敵だ!」

 

 場は静寂に包まれた。

 野次馬達が、皆、ミルナの啖呵に聞き入っている。

 

 酔っ払い同士の喧嘩、程度に思われていた騒ぎは、

 今、立派な見世物に変わっていた。

 

 

603 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:49:34 ID:XaWEGaeMO

 

 

(#д )「さあ、かかってこい!

     俺は主人も持たぬ浪人だ、浪人だが武士だ!

     武士にここまで言わせておいて、なお人質を放さぬほど腐ってはいるまいよ!!」

 

 

 夜の闇。道を照らすネオン。

 

 色とりどりの光が差す中に、ミルナの声だけが響いて、空気に溶けた。

 

 

 光、人垣、店舗、倒れているシナー、その下から何とか這い出したつー。

 視覚に押し入ってくる情報は嫌になるほど多い筈なのに。

 シラネーヨには、ミルナ――敵以外の存在は、もう、見えなかった。

 

 渋澤を突き飛ばす。

 鉄パイプをしっかと握り、ミルナと対峙した。

 

( д )「それでいい」

 

( ´ー`)……うるせーヨ」

 

 

604 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:51:16 ID:XaWEGaeMO

 

 沈黙。

 互いの動向を窺い、

 

( д )

 

( ´ー`)

 

 先に踏み込んだのは、シラネーヨ。

 

(´ー`)「うらあっ!!」

 

( д )……無駄が多いな」

 

 薙ぐように振られた鉄パイプを避け、ミルナは下がる。

 すかさず前に出たシラネーヨが今度は上から振り下ろしてきたが、

 その追撃もミルナは後退することで回避した。

 

 振りが大きい分、シラネーヨに出来る隙も大きい。

 

(#д )「ふっ!」

 

(´ー )「ん、ぎっ……!」

 

 そこへ、プラカードを叩き込んだ。

 

 シラネーヨの腰に激痛が走る。

 それもその筈、プラカードのボード部分がへし折れるほどの勢いで殴られたのだから。

 

 プラカードは、ただの棒切れへと成り果てた。

 

 

605 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:55:33 ID:XaWEGaeMO

 

( д )「む。折れたか」

 

(´ー`)「余裕綽々だなあ、おっさんヨォ!」

 

( д )「っ!」

 

 シラネーヨが下から掬うように鉄パイプを振り上げる。

 ぎりぎりで躱して直撃は免れたものの、顎を先端が掠った。

 

 振り上げられた鉄パイプは、そのまま打ち下ろされる。

 

 プラカードの持ち手とパイプがぶつかり合い、ごおん、と2本が悲鳴をあげた。

 

 交差する互いの武器。

 至近距離で睨み合う。

 

( д )……ただ振っているだけではないか」

 

(´ー`)「うるせえ、こんな喧嘩なんか初めてなんだヨ!!」

 

( д )「そうか」

 

 ミルナは跳ねるように後退した。

 

 シラネーヨが体勢を整えたのも、ミルナが構えたのも、

 かかった時間は一秒程度だったのだが。

 

 ほんの一瞬、差があった。

 

 

606 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:57:07 ID:XaWEGaeMO

 

(#д )「ならば強くなって、出直してこい!!」

 

 ミルナは、両手で握りしめた棒きれでシラネーヨの側頭部を殴りつける。

 

 刀、というよりも、何だかバットを振るような動きだった。

 

(; ー )――っ!!」

 

 ぐわん、とシラネーヨの意識が揺れた。

 鉄パイプが掌からこぼれ落ちる。

 足――いや、体中から力が抜け、彼は地面に倒れ伏した。

 

( д )「峰打ちだ」

 

(; ー )……それの……峰って……どこだヨ……

 

 突っ込みながら、シラネーヨは、

 そういえば峰打ちの方が普通に斬るより酷い場合もあるんだよな、と

 いつぞやテレビで得た情報を思い返して、やる瀬ない気分になっていた。

 

 

607 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/16() 23:58:51 ID:XaWEGaeMO

 

 

;)´)「…………

 

(;*)「! しっ、シナー、起きたか!」

 

 丁度そのとき、シナーが目を覚ました。

 気付いたミルナが声をかける。

 

( д )……おい」

 

(;*)「ひいっ! ご、ごめんなさい、もう何もしません! つーちゃん弱いです!」

 

( д )「こいつ連れてどっか行け。目障りで仕方ない」

 

 こいつ、と指差されたのはシラネーヨ。

 意識は辛うじてあるようだが、体は未だ動かせそうにない。

 __

(;,_` )「おい河内君、警察は……

 

( д )「奉行所は好きになれん」

 

(;*)「は……?」

 

;)´)「見逃してくれるってことネ」

 

 

608 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/17() 00:01:48 ID:/SL0GQosO

 

 ミルナの気が変わらぬ内にと、シナーはシラネーヨを抱え起こした。

 肩を貸す形で立ち上がらせる。

 

(#)´)「お前は阿呆アル」

 

(; ー )「うるせー」

 

(;*)……

 

 シナーが歩き出すと、野次馬が道を開けた。

 

 つーは一度ミルナに頭を下げ、慌てて2人を追った。

 シラネーヨとシナーを支えてやる。

 

(*)「行くぞシナネーヨ!」

 

(; ー )「な、名前……混ぜんな……前向きだけど……

 

(#)´)「この状況だと洒落にならないアル」

 

 3人組が去っていく。

 彼らの背中が見えなくなると、ミルナは目を閉じた。

 

 

609 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/17() 00:02:39 ID:/SL0GQosO

 

( -д- )

 

 同時に、ぱちぱち、周りから拍手が起こり始めた。

 最初は疎らだったそれは、次第に大きく、激しくなっていく。

 

 一連のちゃんばらだとか、途中の説教だとか、敵へかけた情けだとか、

 各々が感動したシーンはばらばらであったが――

 

 ミルナへの称賛であることには、何ら変わりない。

 

 

 

( -д- )

 

(;д )……はっ!?」

 

 

 それからミルナが我に返ったのは、

 何故かあちこちから御捻りが投げ込まれ始めた頃であった。

 

 

 

*****

 

 

610 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/17() 00:04:54 ID:/SL0GQosO

 

 

 

 繁華街の入口近く。

 停めていた車に3人は乗り込んだ。

 シラネーヨを後部座席に寝かせ、シナーが運転席、つーが助手席に座る。

 

(#)´)「鍵」

 

(´ー`)「ほらヨ」

 

(*)「シラネーヨ大丈夫? 病院行く?」

 

(´ー`)「もう体は動かせるけど、まあ一応。……転んだことにしとくか」

 

 シナーが車を発進させると、車内は沈黙に包まれた。

 5分ほど経っただろうか。口を開いたのは、つー。

 

(*)……おっさんかっこよかったな!」

 

(#)´)「私はほとんど寝てたアル」

 

(*)「スーツ翻して、あんな……鉄パイプより弱いようなプラカードで、こう!

     刀みたいに振り回してさ!」

 

( ´ー`)……そうさなあ」

 

(*)「すげえな……

 

 

611 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/17() 00:05:56 ID:/SL0GQosO

 

 再び沈黙。

 今度はシナーが静寂を破った。

 

(#)´)「しかし結局、何一つ成功しなかったアルネ。泥棒も襲撃も」

 

( ´ー`)「まあ、成功しなくて良かったけどヨ。今にして思えば」

 

(*)「うん、たしかに」

 

( ´ー`)……悪いな、俺の変な提案に巻き込んで。

      ああ、くそ、何であんなことしようとしたんだろうなあ俺」

 

(#)´)「いいアル。――止めずに乗っかった私もおかしかったアル」

 

(*)……なあんか、今回、みんな変だったな。

     へたれのシラネーヨが泥棒だの何だの言い出すし、

     いつものシナーなら、あんなの全力で止める筈だったし」

 

( ´ー`)「へたれは余計だヨ」

 

 

612 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/17() 00:07:35 ID:/SL0GQosO

 

 沈黙。三度目。

 病院が近付いてくる。

 シラネーヨが、深呼吸を一つ。

 

( ´ー`)……真面目に就活すっかあ」

 

(*)「おう?」

 

( ´ー`)「また変な気起こしたらたまんネーし。普通に働くヨ」

 

(#)´)「私も、そうするアル」

 

(*)「おお!」

 

( ´ー`)「お前はどうすんだヨ」

 

 問われ、つーは「うん」と声を零した。

 助手席で膝を抱える。

 

(*)「何か。……なあんにもしてないんだよね。

     今までもそうだし、今回だって、シラネーヨとシナーだけ頑張って、

     俺は何もしなかったじゃん。そもそも頑張っちゃいけないことだったけど」

 

( ´ー`)「隠れてただけだったな」

 

 

613 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/17() 00:09:08 ID:/SL0GQosO

 

(*)「だからさ、うん、頑張ってみる。そろそろ1人で生きてかなきゃ、

     本気でお前らに愛想尽かされそうで恐いし」

 

(#)´)「愛想なんてとっくに尽かしてるアル」

 

( ´ー`)「残機ゼロだヨ」

 

(*)「嘘つけー」

 

(*)……中退だと、やっぱ就職難しいよなあ」

 

(#)´)「多分ネ」

 

(*)「ま、やれるだけやるか!」

 

 

614 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/17() 00:10:29 ID:/SL0GQosO

 

 

 ――3人のエンジンが、ようやくかかった。

 ギアも入れて、後は、アクセルを踏み込むだけ。

 

 

 

 

 

(*)「あ! でもさ、俺の一番の夢は『お嫁さん』だから。

     お前ら、先に収入が安定した方と結婚してやる! 寿退社やってみたい!」

 

( ´ー`)「やる気削ぐようなこと言うなヨ」

 

(#)´)「馬鹿すぎる嫁はちょっと……

 

(;*)「で、でも、料理得意だよ!?」

 

( ´ー`)「包丁捌きだけじゃネーかヨ」

 

 

 

*****

 

 

615 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/17() 00:14:31 ID:/SL0GQosO

 

 

(;//д///)(あああああっ! 誰か俺を殺せぇえええええええ!!)

 

 歓声の中、ミルナは頭を抱えてしゃがみ込んでいた。

 何十人もの目の前で「浪人」になるなんて思わなかった。

 

 猛烈に恥ずかしい。穴があったら入りたい。そして二度と出たくない。

 __

( ,_` )「河内君」

 

(; д *)「私は河内ミルナではございません別の何かです私は河内ミルナではございません」

 

 しかも渋澤にまで見られた。

 いよいよもってミルナの人生の終末が近い。

 

 往来で他人をぶん殴るような男と共に働きたい人間などいるわけがない。

 自社に帰ったらきっと周りから凄まじい目を向けられるだろう。

 下手をすればクビ。

 

 というか、警察を呼ぶのは勘弁してやる的なことを言い放ったが、

 この場合、盗っ人3人組よりミルナの方が罪が重いのではないか。

 ミルナはほぼ無傷、あちらは2人負傷している。

 

 

616 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/17() 00:17:10 ID:/SL0GQosO

 

(; д *)(いっそムショに、俺をムショに!!)

 __

( ,_` )

 

(; д *)

 __

( ,_` )……く、」

 

(;д *)(く?)

 __

(*,_` )「くく……――ははははは!」

 

(;д )「!?」

 

 突然、渋澤が笑い出した。

 ミルナはぎょっとし、固まってしまう。

 __

(*,_` )「何だ、だいぶ酔っ払ってたみたいだな。あまり顔に出ないタイプか」

 

(;д )「え」

 __

(*,_` )「変な酔い方するもんだ。……ふ、ははっ、思ったより面白い奴だな、君は。

     俄然興味が沸いてきた」

 

(;д )「わっ」

 

 ミルナの右手を渋澤が両手で握り、ミルナを立たせた。

 それを見て、野次馬からまたもや盛大な拍手が巻き起こる。

 もはや何でもいいらしい。

 

 

617 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/17() 00:18:41 ID:/SL0GQosO

 __

(*,_` )「それに、俺は時代劇が好きなんだ。話が合いそうじゃないか」

 

(;д )「えっ……と、いや、俺は時代劇好きとかじゃ」

 __

(*,_` )「何だ、そうなのか? まあ、あれだけやってたんだ、素質はある。

     今度面白い時代劇を教えてあげよう。

     そうそう、さっきは助かったよ。ありがとう」

 

(;д )「は、はあ」

 __

(*,_` )「これからもよろしく頼むぞ。河内君」

 

 ――「これからも」。

 

 ミルナは、ぽかんとした表情で渋澤を見た。

 

( д )……え?」

 __

( ,_` )「ああ、だからといって仕事がまったく駄目だったら次こそアウトだぞ。

     そうだな、ちょっと表情を柔らかくする練習からしてみよう。

     君はいつも難しい顔してるから相手を恐がらせるんだ」

 

 

618 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/17() 00:21:12 ID:/SL0GQosO

 

 渋澤は手を離し、ミルナの背中を叩いた。

 「な?」と、渋澤が笑みを深くする。

 

 つられて、ミルナも、小さく笑った。

 __

( ,_` )「ああ。そう、それがいい。一気に人のよさそうな顔になった」

 

 

 そういえば、最近他人の前で笑うことがあまりなかったな、と。

 緩む頬を摩りながら、ミルナは思った。

 

 

 

*****

 

 

619 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/17() 00:22:54 ID:/SL0GQosO

 

 

 

ζ(゚ー゚「おかえりなさい!」

 

 午後10時過ぎ、ミルナはようやく帰宅した。

 デレが出迎え、コートを受け取る。

 

( д )「ただいま……ああ、あの、ごめん。メールしそびれたんだけど、

     終わったよ。あれ」

 

ζ(゚ー゚「終わりましたか! 丁度よかった、ミルナさんにお客様です」

 

( д )「客?」

 

 リビングにミルナを連れていき、内藤達を紹介した。

 ひとまず本題に入る前に、デレはジョルジュとペニサスをリビングから出す。

 

('`*川「仲間外れですか?」

  _

( ゚)「寂しいなあ」

 

ζ(゚、゚「ちょっと内緒の話だから……

 

( ^ω^)「すみませんお、すぐ終わらせますから」

 

 これで、リビングに残ったのは5人。

 事態を説明するべく、内藤は口を開いた。

 

 

620 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/17() 00:24:02 ID:/SL0GQosO

 

 

 

(;д )――本が、生きてるって……

 

( ^ω^)「信じる信じないは自由ですお。

       ただ、無闇矢鱈に口外はしないでいただきたいお」

 

(;д )……人に話したところで誰が信じるんです」

 

( ^ω^)「おっおっお。あなたみたいな人なら、そう言ってくれると思いましたお」

 

 ミルナは、俄かには信じられないようだった。

 あまりにも非現実的な話である、なかなか受け入れられなくても無理はないだろう。

 

( ^ω^)「というわけで、例の『本』は元々うちにあったもの。

       よろしければ、返してもらえませんかお?」

 

(;д )「それは勿論……って言っても行方不明なんですけど」

 

( ^ω^)「多分あなたの鞄にでも入ってるかと」

 

(;д )「鞄?」

 

 持ったままだった鞄を開き、ミルナは「うわ」と声を漏らした。

 昨日はまったく見付からなかった柳色の本が、たしかに鞄の中に存在している。

 ミルナは不気味に思いながらも本を内藤に手渡した。

 

 

621 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/17() 00:25:21 ID:/SL0GQosO

 

(;д )「おかしいな……

 

ξ゚听「まあ、自分の『山場』は自分で見届けたいでしょうから」

 

(;д )……そういうもんなんですかね」

 

(*;;)「ああっ、おかえり!! 久しぶりだねえ!」

 

(;д )(うわなにこの人きもちわるい)

 

 ツンの言葉にミルナが僅かに抱いた恐怖は、

 本に頬擦りしながら泣き始めたモララーの気持ち悪さによって掻き消えた。

 

( ^ω^)「よし、回収完了、と。――そうそう、ホテルの部屋が取れなかったんですおね。

       今ならもう大丈夫だと思いますお」

 

(;д )「え?」

 

( ^ω^)「たしかめてみるといいお」

 

 

622 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/17() 00:26:00 ID:/SL0GQosO

 

 促され、携帯電話でインターネットに繋ぐ。

 駅前のホテルを調べてみると、

 

(;д )……空いてる……!」

 

 果たして、空室はあった。それも何部屋も。

 一昨日、満室だと言われたのが信じられないほどだ。

 

 今の内に予約したら、とツンが言うので、ミルナは急いで予約を取り付ける。

 

 それを満足そうに頷きながら眺め、内藤はツンとモララーに「帰るお」と告げた。

 

(;д )「あ、さようなら」

 

( ^ω^)「どうもすみませんでしたおー」

 

(;д )「いや、まあ、何か結果オーライって感じだったので」

 

ξ゚听「念押しするけど、このことは誰にも言わないように」

 

(;д )「はい」

 

(*;;)「ああああ本当に久しぶり……今夜は本と一緒に寝よう」

 

(;д )(きもちわるい)

 

 

623 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/17() 00:27:35 ID:/SL0GQosO

 

 ――デレは、内藤達を玄関まで見送った。

 おやすみなさいと挨拶して車へ向かおうとする3人に、デレは手を振って返した、が。

 ふと思い立ち、内藤の腕を掴んだ。

 

( ^ω^)「お?」

 

ζ(゚、゚「あの、いっこ、いいですか?」

 

(*^ω^)「何だお? 別れのハグでも御所望かお」

 

ζ(゚、゚「そうではなくてですね」

 

 ツンが白い目で内藤を見ている。

 言葉だけでなく実際にデレを抱きしめでもしたら、多分、ツンの手は内藤を仕留めるだろう。

 

ζ(゚、゚「私、ツンちゃんの苗字知らないなあ、って……

 

ξ゚听「苗字?」

 

 ツンの視線が内藤からデレに移動した。

 いつもの無表情。

 

ξ゚听

 

 それから内藤と顔を見合わせ、小首を傾げた。

 

 

624 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/17() 00:28:10 ID:/SL0GQosO

 

ξ゚听……知らない」

 

ζ(゚、゚「へ?」

 

ξ゚听「知らないのよ、私の苗字」

 

ζ(゚、゚「知らないって……

 

 そんなことがあるのかと問おうとしたデレは、

 内藤に頭を撫でられ、開きかけた口を閉じた。

 

( ^ω^)「……ツンは、みんなと違うんだお」

 

( ・∀・)「うん、そうだね」

 

ζ(゚、゚「違う?」

 

( ^ω^)「色々と。……デレちゃんが気にすることじゃないお」

 

ζ(--;ζ「う、うむむ」

 

 ぐしゃぐしゃ、髪を掻き混ぜられる。

 誤魔化されている気もしたが、何だかそれ以上踏み込んではいけないように思えた。

 

 

 

*****

 

 

625 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/17() 00:30:04 ID:/SL0GQosO

 

 

 

( д )「お世話になりました」

 

('`*川「いえいえ、こちらこそ」

 

 翌朝。

 4人揃っての朝食をとり終え、デレは学校へ、ミルナは会社へ行く時間となった。

 

 ミルナは先にホテルへ荷物を預けに行くという。

 

  _

( ゚)「俺達は先にこの町を出るけど、頑張ってな、ミルナ君」

 

('`*川「また会えるといいですね」

 

( д )「ええ、本当に。

     ……ありがとうございました」

 

 「ありがとう」には、様々な意味が込められていた。

 

 住まわせてくれたことは勿論だが、何より――

 彼を、受け入れてくれたことが嬉しかった。

 

 恐くないと言ってもらえて、心から、嬉しかった。

 

 

626 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/17() 00:32:56 ID:/SL0GQosO

 

( д )「デレちゃんもありがとう」

 

ζ(゚ー゚「私は何もしてませんよ」

 

( д )「そんなことないよ。……あの人達にも、お礼言わなきゃなあ」

 

 全ては本が導いたのだ。

 一番感謝すべきは、あの本かもしれない。

 

 くすり、ミルナが笑う。

 

 その笑顔が優しくて、デレは、ちょっとだけ驚いた。

 

 

 

*****

 

 

627 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/17() 00:35:12 ID:/SL0GQosO

 

 

 

( ^ω^)「おっおおん、おっおー、おんおんおー」

 

 赤信号。

 ハンドルを指で叩いてリズムをとりながら、内藤は調子っ外れに歌う。

 

 信号が赤から青に変わった。

 歌を止め、車を発進させる。

 

('`*川「すみません、送っていただいて」

  _

( ゚)「ガソリン代と、いくらかお礼は払うよ」

 

( ^ω^)「いえいえー。やりたくてやってることですから」

 

 後部座席には長岡夫妻。

 

 現在、午前9時半。

 内藤の車で彼らを駅まで送っているところだ。

 

 

628 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/17() 00:36:17 ID:/SL0GQosO

 

 助手席のツンが、溜め息。

 

ξ゚听「美人には尽くすタイプですから。この人」

 

('`*川「まあ」

  _

( ゚)「ペニサスさんはあげないぞ、内藤君」

 

( ^ω^)「そりゃあ残念」

 

 赤信号。車を停める。

 

('`*川「……それにしても、良かった。

     デレさんが大人の方とお知り合いで」

 

( ^ω^)「お?」

 

('`*川「あの子、友達多くなかったみたいだし……

     いざってときに頼りになる人がいるのか、不安だったんです」

 

( ^ω^)「おっお、任せてくださいお」

 

ξ゚听「車の送迎以外に役立ったことはあったかしら?」

 

(;^ω^)「うぐっ」

 

 

629 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/17() 00:37:10 ID:/SL0GQosO

 

('`*川「ふふ……

     どうか、デレさんのこと、よろしくお願いします」

 

('`*川「何だかあの子ったら、足を怪我したみたいだったし」

  _

( ゚)――え? そうなのか?」

 

( ^ω^)「あれ、デレちゃん、足のこと言ってなかったんですかお?」

 

('`*川「聞いてませんねえ」

  _

( ゚)……ああ、そういや、足を出してるとこ見てないな」

 

('`*川「ちょっと歩き方も変でしたから。怪我したのかなあ、と」

 

 内藤は、ここ数日のデレの姿を思い返してみたが、

 歩き方に違和感などは見られなかった。

 

 さすが母親、と言ったところか。

 

 

630 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/17() 00:39:02 ID:/SL0GQosO

 

('`*川「跡とか残るような傷ですか?」

 

( ^ω^)「……多分。目立つほどじゃないとは思いますが」

  _

( ゚)「なん……だと……

 

('`*川「あら……お嫁にいけるかしら。

     跡とは言っても足だし……でも……ううん……」

  _

( ゚)「これはもう本格的にモララー君との結婚を視野に入れた方が……

 

( ^ω^)「あれと結婚させたら絶対に後悔しますお」

 

ξ゚听……まあ、あまり心配しなくても」

 

 ツンは窓の外に目を向けた。

 抑揚のない声で呟く。

 

ξ゚听「嫁の貰い手ぐらい、案外すぐ見付かりますよ」

 

 

 

*****

 

 

631 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/17() 00:40:49 ID:/SL0GQosO

 

 

 

( ^ν^)「――っふぇぶしっ!」

 

( ;;)「わああああニュッ君がくしゃみしたぁあああああ! 風邪? 風邪!?」

 

川д川「あったかくしてね……ニュッ君は風邪が長引くんだから……」

 

ハハ -)ハ「誰かが噂してるのカモ」

 

( ゚)「ああ、かもな」

 

( ;;)「ニュッ君なんかの噂する人いるわけないじゃん! 風邪だよ!」

 

( ^ν^)「おい」

 

( ;;)「ニュッ君が寝込んだら誰が俺の本を読んでくれるのぉおおおお!!」

 

( ^ν^)(うるせえ……)

 

川д川(うるせえ……)

 

 

 

 

 

第四話 終わり

 

 

632 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/17() 00:43:22 ID:G08S0m5g0

乙ゥゥウウウウウウウ!!!!!

今回も良かった!

キュートかわいすぎわろた

 

 

633 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/17() 00:44:49 ID:/SL0GQosO

今回の投下終わりです

次回投下は、来週中に来れたらいいな

 

読んでいただきありがとうございました!

 

>>632

o*゚ー゚)o「私が可愛い? 当たり前だろ」

 

 

 

しおり的な目次的な

 

第二話前 >>104

 

第二話後 >>175

 

第三話前 >>250

 

第三話後 >>333

 

第四話前 >>431

 

第四話後 >>527

 

 

ではでは

 

 

634 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/17() 00:46:35 ID:tsvLHDkAO

乙っした!!

 

 

635 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/17() 01:46:40 ID:uGe0IUCkO

乙!

泥棒3人組がいい味出しててワロタ

図書館住人たちの謎もますます気になるな

 

 

636 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/17() 14:22:35 ID:T1jt9Sao0

モララーは鬱展開嫌いなんだな

 

 

637 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/17() 18:24:07 ID:VFyYkgtMO

最初から一気読みしてきた

続きが待ち遠しい…!

 

モララーきもかわいいです

 

 

638 :以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/04/19() 12:26:28 ID:cdhZ93bw0

時代劇でコレなんだからSFとかファンタジーを演じることになったら大変だな